
長編
海岸沿いの夜道にて
あ 3日前
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す。
私の右腕を引いたのは、Aでした。Aは早口でこう言います。
A「コンビニ、もういいわ。戻ろう」
私「は?何言ってんだよ、お前が」
A「いいから!戻ろう!」
そう言うと、Aは私の手を引いて、バンからものすごい勢いで離れていきました。
厚意を無下にする形で別れることになり、私は申し訳なさからバンの方を振り向きました。すると、
バンッ!!
バンバンバンバンバンッ!!!!
大きな音がします。手です。手が後部の窓を叩いています。力一杯。割れんばかりに。
その手の間から、先程後部座席で震えていた男女がこっちに向かって何かを叫んでいます。私は耳を澄ませました。
たすけて
そう言っているように聞こえます。既にドアは閉まり、金髪の青年は助手席に戻っていました。なので、車内の声はよく聞こえません。しかし、たしかにそう聞こえるのです。
私「おい!あの人たち!やばいんじゃないか!助けないと!」
A「いいから歩けよ!いいから!」
私「でも、助けてって!」
Aは歩みを止めようとはしません。
そうこうしているうちに、バンは走り出しました。窓を叩く音とともに、私たちから離れて行き、やがて見えなくなりました。
その段階になって、ようやくAの歩みは緩み、私は腕を振りほどきました。
私「どうしたんだよ急に!」
A「あいつらがヤバいの気づかなかったのか!?」
私「お前そりゃ後部座席の人たちが助けを求めてたんだからヤバいやつらなのは」
A「違くて!!!」
私「……どういうこと?」
A「お前、北側のゲートの鍵持ってるよな?」
私「うん、開けなきゃ出れんし」
A「南側のゲートも同じだよな!?」
私「……あっ」
A「あいつらどこから入ってきたんだよ!?」
私たちは、結局、事務所まで足早に戻り、Bに見回りを任せ、事務所で震えながら一晩を過ごしました。
翌朝、日が出てから確認しに行くと、南側のゲートには何の異常もありませんでした。北側も同じです。車がこの道に入ることも出ることも事務所にあった鍵か私が持っていた鍵がなければ不可能だったのです。
私とAは、それ以降宿泊管理の当番を外してもらいました。あの青年の不気味な明るさと、後部座席の男女の窓を叩く音、そして悲痛な叫びが今も頭から離れません。
ここからは後日談です。
数日経って、南側の海岸に男女の遺体が打ち上げられました。
警察の調べでは、南側の崖から飛び降りて心中を図ったものと見
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- Aさんの機転がなければ、作者は連れてかれていたねハオ
- 車は霊界への運び屋だったのですね!怖い~霊子
- 実際にあった話です…繁華街は大丈夫ですが人気のない夜道は今でも怖いですひよけむし
- 金髪の青年たちが男女を崖から落としたのでは?と思ったんですが、車は北上していて崖からは遠ざかってるんですね…ひよけむし
- 本当にあった話なのかしら?匿名
- 謎の多い本当に怖い話しでした。匿名