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お題 長編
カトクカ
カトクカ
お題 長編

カトクカ

16時間前
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# 死亡推定時刻

――朗読用・配信者一人称版

午前二時十七分から二十三分まで。

俺のコメント欄は、その六分間だけ、俺のものではなくなる。

そう言うと、怪談らしく聞こえるかもしれない。

でも最初は本当にただの荒らしだった。

名前は、カトクカ。

意味のわからない名前だ。

読みづらいし、語感も悪い。

コメント欄に流れてきても、一度見ただけでは覚えられない。

それでも俺は、今でもはっきり覚えている。

投稿者名は、カトクカ。

本文は一行だけだった。

《また同じ話してる》

それが最初だった。

俺は瀬田直人という。

配信ではセタナオと名乗っている。

大手ではない。

ただの無名とも少し違う。

毎回見に来る固定のリスナーがいて、切り抜きも少しは回る。スパチャと広告と案件未満の小さな紹介で、生活費の一部くらいはまかなえる。

それくらいの配信者だ。

配信部屋は六畳のワンルームだった。

机の上にモニターが二枚。

安いアームに吊ったマイク。

リングライト。

壁際には開けていない宅配の箱が積んである。

画面の中だけは、少し賑やかに見える。

だが配信を切れば、部屋はただの部屋に戻る。

俺はその落差が嫌いだった。

だから配信中は、多少変なコメントが来ても笑う。

荒らしが来ても拾う。

きついことを言われても、ネタに変える。

怖がると、負けた感じがするからだ。

カトクカが最初に現れた日もそうだった。

コメント欄の流れはいつも通りだった。

深夜の雑談配信。

時事ネタを少し話して、リスナーの相談を適当に拾って、眠れない人間たちが何となく集まっている。

そこに、知らない名前が流れた。

投稿者名は、カトクカ。

《また同じ話してる》

俺は笑った。

「うるせえな。初見でそれ言うなよ」

コメント欄が少し沸いた。

《草》

《初手煽り》

《セタナオ効いてる》

《カトクカって何》

その程度だった。

カトクカは、そのあとも何度か来た。

投稿者名は、カトクカ。

《誰も本気で見てない》

別の日には、こうだった。

《今日はやめとけ》

俺はそのたびに拾った。

「なんだよ。俺のマネージャーかよ」

リスナーも面白がった。

《カトクカ出勤》

《今日もいる》

《常連じゃん》

《名前だけ怖い》

俺もそう思っていた。

変な名前の常連荒らし。

それ以上でも、それ以下でもない。

変わったのは、ある雨の日だった。

その日は配信前に、一本電話を受けていた。

内容は仕事の話だった。

外には出ていない。

誰にも言っていない。

配信でも触れていない。

それなのに、深夜二時過ぎ、コメント欄にそれが流れた。

投稿者名は、カトクカ。

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はじめまして、よろしくお願いします。

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