
それは、とある地方の街外れにある昔ながらの遊園地「鷹爪公園(たかづめこうえん)」でした。
昭和の時代から市民の憩いの場として家族連れやカップルに深く慣れ親しまれ、市民や地域住民の小さい頃に何度も行ってアトラクションを楽しんだ、思い出の宝箱のような場所です。近年の大規模テーマパークの台頭で客足が遠のくこともありましたが、それでも地域の人々の笑顔のために、心優しい高齢の園長が細々と経営を続けていました。
しかし、近年の子どもの人口減少や、施設の老朽化による莫大な維持費が重なり、いよいよ経営が圧迫され、園長が涙ながらに「閉園」を視野に入れ始めたその時――。
まるで地獄の救世主のように、甘い「救いの手」を差し伸べたのが、都会の一等地に本社を構える大企業でした。
「鷹爪公園」はリニューアルという名目のもと、高強度のフェンスで覆われ一時閉鎖されました。しかし、そこに運び込まれてきたのは「鷹の爪」などではなく、文字通りの「悪魔の爪」でした。
昭和の時代から子供たちの笑顔を乗せて回り続けていた昔ながらの観覧車や、どこか優しかったジェットコースター、夢を運んでいたメリーゴーランド。それらの思い出のすべてが、本社の送り込んだ「悪魔の爪」という名の冷徹な巨大重機によって、バリバリと耳障りな音を立てて無残に引き裂かれていったのです。
近隣のマンションの窓から、そして一戸建ての庭からも生々しく見えるその破壊の光景は、まるで周囲の住民たちに
「お前たちの安らげる居場所は、もうここにはないんだよ」
と冷酷に告げているようでもありました。
やがて完成し、不気味にギラギラと輝くネオンを放ち始めたのは、全く別物の「鷹爪パーク」でした。
そこは、敷居を跨ぐための入場料の時点で、従来の入場料に「0がひとつ多い」高額設定。
さらに、従来の3倍の高さから落下する絶叫マシン「鷹爪スプラッシュ」などに乗るためのフリーパスは、目ん玉が飛び出るほどの天文学的な価格に設定されていました。驚くべきことに、高い入場料を払っただけでは、パーク内のガーデン(通路)をただヘロヘロになって歩くことしかできず、アトラクションに乗るためには追加料金が容赦もなく毟り取られる仕組みになっていたのです。
あまりに高額すぎるため、かつてここを愛していた近隣の一般住民たちは、新しくなった鷹爪パークに足を踏み入れることすらできなくなりました。
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