これは、私が19歳の時の話です。 私は当時浪人生で、バイトをしながら次の受験に向けて勉強中でした。毎日バイトと勉強のサイクルを繰り返しており、やっとこの生活リズムに慣れてきたな、という頃です。仕事が休みの日に、バイト先から然程離れていない距離にあるカラオケ店へ、息抜きを兼ねて歌いに行った日のことです。 この店は料金が安く、よく学生が利用する店です。平日の真昼間のため、店員以外いない状況でした。案内されたのは2階の奥の部屋です。両隣は空き部屋で、全体的に暗い部屋です。 2時間程歌っていた時、いきなり右隣の部屋から壁を叩く音が聞こえてきました。突然のことで、驚いて思わず歌を中断し音がした壁の方をじっと見ました。2、3分経ち、また壁を叩く音がしました。少し気味が悪くなり、1度部屋の外へ出て隣部屋を覗きました。もともと空室のため、ドアは空いている状態です。見たところおかしなところは何もなく、薄暗いだけの空間が広がっているだけでした。 気味が悪かったのですが、時間もまだ残っていたため部屋に戻りまた歌い直しました。 しかし1時間程たったころ、また壁を叩く音が聞こえてきました。今度は天井から聞こえてきました。この店は2階建のため、上から音がすることなどあるはずがないのです。音が止んだと思い、また歌い直そうと思いそのまま部屋に居続けました。しかし、一曲歌い終わる辺りの時、また右隣から壁を叩く音がしました。 流石に怖くなり、まだ時間が残っていたのですがその日は帰宅しました。 しかし、この体験はこの日だけではありません。過去に計10回ほどこの店を訪れていましたが、ほぼ毎回同じ部屋に通されていました。10回中7回はこの部屋なのです。他にお客が居ても、この日と同じような平日でも、必ずこの部屋に案内されました。 過去に友人とこの部屋で歌っていた時も、同じように壁を叩く音がしました。それは、隣部屋が使用中のときもです。1度隣部屋の方に聞いてみましたが、壁は叩いていないとのこと。それでも、また部屋に戻り歌っていたら再び音がしました。今度は天井からも叩く音が聞こえてきました。 このようなことが何度も起こるので、それ以降このカラオケ店へ行くことはありませんでした。 今もそのお店は営業しています。しかしまたあの部屋に案内されたら…、と思うと恐ろしくなります。 あの現象が何だったのか、未だに謎のままです。