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長編

山岳遭難体験記

しもやん 2時間前
怖い 165
怖くない 69
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してきた。  下山口が見つからないのなら、適当に阿蘇谷を下ってしまえという無茶な行程に変更、地図上で登山道が伸びている地点から無理やり下山を始めた。知らない読者のために申し添えておく。絶対に地形図の登山道表記を真に受けてはならない。地形図は航空写真から等高線を起こしているので、等高線表記に間違いがある可能性は皆無なのだが、道の表記は数十年前の実地調査の記録をそのまま踏襲している、というケースが常態化している。  そのため実際は廃道になっていたり、新しく造成された新ルートが伸びていたりと、地図と現場が相違する現象にたびたび遭遇する。このときもそうだったようで、地図上は道の上を歩いているはずなのに、現場は急峻な沢があるだけで道などどこにも見当たらなかった。  それでも等高線と現場の地形は一致しているので、構わずわたしは無理やり下っていった。ところが阿蘇谷の上流はV字に切れ込んだ深い谷になっており、とても下っていけるような様相ではない。〈迷ったとき、沢を下ってはならない〉。登山の格言を遅まきながら思いだし、わたしは疲れ切った身体に鞭を打っていったん稜線まで戻った。戻る際も当然道はなく、崖に近い角度の尾根を死ぬ思いで登りきった。  問題はどうやって下山するか、である。過去にダイラの頭から地図に表記のないバリエーションルートを辿って下山したことがあった。尾根ルートであれば沢のように滝や段差で進退窮まる恐れもない。すでに時刻は17:00をすぎており、あたりは闇に包まれていたものの、一度通った道であればバリルートでも下山できる自信があった。  ダイラの頭を目指して稜線を歩いていく。いつもはヘッドランプを携帯しているのだが、この日は別のザックにしていたのでヘッドランプ未携帯だった。こうなればスマートフォンに頼るしかない。とはいえスマートフォンのライトは光量に乏しく、有効視程は2~3メートル程度。まさに一寸先は闇である。  ダイラの頭に着いたのが17:30。ここで天気予報通り雨が降り始める。それも天が割れたかのようなすさまじい土砂降りであった。雨具はあったのだが、どうせすぐ止むだろうと高をくくって着ないまま下山開始(この楽観がのちの窮地へとつながる)。ダイラの頭からのバリルートは尾根があちこちに褶曲する山上の迷路のようなルートで、分岐点を間違えれば復帰不能の谷底へ降りてしまう。わたしはスマートフォンを片手に持ちながら、

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  • 臨場感溢れる文章と自分の徹底した客観視が相まって面白かった
    魂観
  • 文才に尊敬と嫉妬です。
    1人で寝れない
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