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中編

私はずっと引き立て役だった

しる 2020年5月14日
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私は心霊的なものは信じないタイプの人間なのですが、一度だけ恐ろしい体験をしたことがあります。 これは霊というより人間の怖い話に分類されると思いますが、誰にでも起こりうることです。 どうかお気をつけください。 今から4年前、成人を迎えた私は成人式とその後の同窓会に出席しました。 私はずっと地元にいましたが中には卒業後に引っ越していった子達もいたので、久しぶりに色々な人と会えてすごく楽しかったのを覚えています。 懐かしい同級生達と楽しく会話をしていると、1人の女性が近づいてきました。 それが、中学時代に最も仲の良かったサヤカ(仮名)でした。 サヤカとは高校進学後、全く連絡が取れず地元にいるのかどうかすらわかりませんでした。 聞くと、高校卒業後に東京の大学に進学したもののついていけず中退してこちらに帰ってきたとの事です。 今はバイトをしながら、専門学校に通うための資金を貯めていると話してくれました。 サヤカはずっと私と連絡を取りたかったけど、大学を中退したことが後ろめたくて連絡を取りづらかったと言っていました。 それから定期的にサヤカと連絡を取るようになりました。 お互い忙しくてなかなか会える日はありませんでしたが、夜遅くまで他愛のない電話をしたり、くだらない画像を送り合ったり まるで中学生の頃に戻ったようでした。 しかし、サヤカと連絡を取り始めてから、私の周囲でよくない変化もありました。 兄がバイクで事故を起こしたり、健康が取り柄だった母が急に倒れて入院したり、父の勤める会社でボヤ騒ぎがあったり… 私自身も、急に虫歯ができたり、片耳が聞こえなくなったり、バイト先が潰れたりと色々よくない事が起こりました。 そんなある日、いつものように布団で寝ていると枕元から声が聞こえました。 最初は男性の声だと思ったのですが、よくよく聞くと女性の低い声です。 なんでこんな声が…?と思い、ゆっくり枕元を見ると、そこにはサヤカが立っていました。 サヤカは涙を流しながら 「お前なんか嫌いだ、死ねばいい」 とボソボソ何度も呟いていました。 私の意識はそこで途絶えました。 目を覚ますと朝になっていて、サヤカはいませんでした。 なんとなく嫌な予感がし、サヤカに電話をかけるといつも通りのサヤカでした。 とすると、昨日見たあれは…? すごくモヤモヤしましたが、とりあえず夢だったと思うことにしました。 それからそんなにしないうちに、母が祖母の知り合いだという占い師(?)の女性を連れてきました。 どうやら母は最近家の中でよくないことが起こっていることを不思議に思い、その占い師に相談していたようなのです。 その人は私の顔を見るとすぐに 「お祓いしましょう。私の知人の霊能者を呼ぶから今すぐに準備して」 と言い、15分程でその霊能者も家に来ました。 私はろくに説明も受けないままお祓いされ、終わってから一通りの説明を受けました。 占い師と霊能者の話によると、私にはとんでもなく強い生き霊が取り憑いていたそうです。 その生き霊の特徴を聞いて驚きました。 サヤカの生き霊だったのです。 サヤカの生き霊は私が不幸になることを強く望んでおり、その結果私以外の家族にも悪い影響が出ていたようです。 それからしばらくして私の周りで起こっていたよくないことは全て鎮まり、ほぼ同時にサヤカが体調を崩し入院しました。 同級生の間で色々な噂が飛び交いましたが、そんな中で私はサヤカに嫌われていたという事実を知ることとなりました。 それはサヤカが入院前に私宛に書いた手紙の中で語られていました。 『突然、こんな手紙を書いてごめんなさい。 私は本当はあなたのことがずっと嫌いでした。 なぜかというと私はずっと引き立て役だったからです。 明るくて友達が多いあなたと、勉強も運動もできない、おまけにコミュニケーションが下手で見た目も太っていてブサイクな私が一緒にいられたのは、あなたにとって私が引き立て役だったからだと思っていました。 この間、同窓会で再会して、あなたが私を本当に友達だと思っていてくれていたことを初めて知りました。 本当に本当にごめんなさい』 その後、サヤカが退院したという話は聞きましたが、サヤカが今どこで何をしているのかは知りません。

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