
中編
古いアパート
匿名 4日前
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母親はうーん、と長めに相槌を打った後、
「あんたのとこにも行ったのか」
と何かを悟ったように言いました。
母親曰く、決まって父親が夜勤で居ない晩に過去数回、恐らく同じ何者かが足の間に入って来たと言うのです。
「その他は何もしないしね。びっくりしただろうけど、あまり深く考えないで。気にしない事ね。」
私と違って平然としている母が不思議でなりませんでした。
何者かが私の前に現れたのは、それが最初で最後でした。それから1年も立たず、別の理由でアパートを引っ越しました。
「一種の色情霊、ってやつだったのかもね」
数年前、母と当時の体験について思い出話をしていた際に、大人になった私に、そう言ったのを覚えています。そして母は幼い頃から何度も心霊体験をしていた事もその時初めて打ち明けてくれました。
現在の住処は、そのアパートからそう遠くはありません。今でもたまに側を通ります。当時から20年近く経ってはいますが、壁を塗り替えたようで、外見上は綺麗になって居り、私が住んでいた部屋にも住人が居るようです。その住人は、私の味わった恐怖を体感していないことを望みます。
「あのアパートは本当に色んな現象が起こったわ。足の間に入って来た人はびっくりだったねー。…今でもたまに来るけど」
そう言って母は、笑っています。
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