
中編
身勝手な代償
匿名 2019年11月3日
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私が中学生の時の話です。
その当時、携帯ゲームはゲームボーイが主流でした。
通信対戦などで友達と遊べるため、学校終わりには誰かの家に集まりゲームボーイをするというのが日課になっていました。
たまに誰の家にも入れず、仕方なく外で遊ばなくてはいけない時は、近くの神社でゲームボーイという日もありました。
いつものメンバーにその神社のほぼ向かいに住んでいる野崎というやつがいました。
この野崎は勉強はできないがスポーツはできるというタイプでゲームも上手く、クラスでもとても人気があるタイプでした。
野崎の親からしたら成績も悪く、宿題もしない、ご近所さんからも見える神社でゲームをしてる恥ずかしい息子という感覚があったのでしょう。
母親からはいつもキツめに小言を言われていた印象でした。
よく言われてたのが「そんなゲームばっかりやって、目悪くなったらどうすんの?」というど定番の文句でした。
野崎はいつも「悪くなってもメガネかければいいんだよ!」って言い返していました。
そんなある日、私たちのグループはまた誰の家にも収まらず、いつもの神社でゲームをしていました。
その日は珍しく野崎の母親が神社まで来て、なにやらお参りをしていました。
どうやら野崎の弟が受験らしく、そのお参りとのことでした。
母親は去り際にいつものように野崎に小言を言いました。
「あんたは勉強もしないでゲームばっかでどうしようもない!この家は弟に任せるわ!」
「受験で大事な時期なんだから、タク(弟)の前でゲームやったり誘惑すんじゃないよ!」
「あんたの目が悪くなる代わりに合格できるってもんじゃないんだからね!」
など、受験前でピリピリしているのかいきなりイラつきを露わにしてきます。
野崎も黙っていれば良いのに、
「息子の目が悪くなりませんようにってお願いもして行け!母親だろ!」など余計なことを言いました。
野崎の母はくるっと引き返し、
「うちの長男はバカ息子です、こいつの目はどうなっても良いので、弟を合格させてください」と野崎に聞こえるように嫌みたらしく言いました。
野崎も「聞いたか!おコンコンさま!(稲荷神社なので)ってことでよろしく!」と大声で応えました。
それから数日後、野崎が学校を休みました。先生に聞いたところ「昨日公園で怪我をして大事をとってお休みと聞いてる」とのことです。それから1週間程、休みが続いたので野崎の家に電話をしました。
すると野崎が電話に出ました。
私が「野崎、お前大丈夫か?ケガってどんなケガよ?」と聞くと、
「んー、まぁ、大したことはないよ。
家で暇してる、なんなら今から家来るか?お前1人ならべつにかぁちゃんも許すと思うわ」と少し元気は無いなと思いましたが電話だったのでそこまで気にせず、野崎の家に行きました。
玄関で出迎えてくれた野崎を見て、私は驚きました。
顔の半分以上に包帯を巻いていて左目をかばうようでした。
野崎に事情を聞くと、公園でしたケガというのは、乗って揺らして遊ぶ遊具に左目をぶつけたとのことでした。
私はこの間の神社での出来事を思い出し、ゾッとしました。
「それってなんか怖くないか?」
「どうしてそんなくだらないケガしたんだよ?」と聞くと
野崎は「俺もどうかしてたわ、ほんとバカだったわ」と話し出しました。
その日は最近、遊んでない友達から誘われ、公園でスケボーをして遊んだ。
その公園にあった「恐竜」がガクガクしてていっそのこと壊してやろうと思った。
(「恐竜」というのはその公園にある遊具で、もともと黄色いラクダだと思うが、塗装は剥げ、首の長い恐竜に見えるのでそう呼んでいる)
その恐竜は3人乗りくらいで、左右に揺らして遊ぶ遊具でした。
これが普段よりガクガクしていたので「思いっきり揺らせば壊れるんじゃないか」と思い、力いっぱい揺らしていたら、足が滑り左目をぶつけてしまったとのことでした。
一緒に遊んでいた友達からも話を聞いたら、野崎はいきなり恐竜を揺らし始めて、自分から当たりに行ったように見えたとのことでした。
顔面の半分が赤紫に腫れ上がり、包帯で隠してもグルグル巻きが恥ずかしいから学校を休んでいたとのことです。
腫れが引いても視力は回復せず、
朝目覚ましが目えないほどの視力になってしまったとのことです。
弟は合格したとのことでした。
この何年後かに知ったことなのですが、
稲荷神社は付き合い方に注意が必要なようです。
例えば
ある男性が300万円が欲しいとお願いして、実際に300万円を手に入れることができたが、それは娘が死んだ保険金だった
このように本来の意図を逸脱した残酷な結果もあり得るようです。
ご注意ください。
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