
私が彼氏と付き合い始めた頃の話です。
私たちは海を見るのが大好きで、その日も寒い冬の夜に海岸沿いをドライブすることにしました。昼間は雪が降ったりしていましたが、夜には晴れ間が見え、星がきれいに輝いていました。
私たちはいつもの道ではなく、少し冒険心を持って知らない海岸の道を選びました。車を走らせると、まるで忘れ去られたような古ぼけたバンが目の前に現れました。
そのバンはヘッドライトも点けておらず、周囲の暗闇に溶け込んでいました。外装は錆びつき、窓ガラスは曇り、まるで何年も放置されているかのように見えました。そのバンは時速10キロほどでのろのろと走っていました。
最初は後ろにくっついていたのですが、周囲には他の車はおらず、彼がイライラして追い抜くことに決めました。追い抜きざまに運転席を覗くと、そこには誰もいない、ただ空っぽの空間が広がっていました。
私たちは目が合って、しばらくの間声も出せず、ただ硬直していました。彼は「運転手が見えなかっただけだ」と言いましたが、私は助手席からしっかりと運転席を見ていました。確かに、誰もいなかったのです。
私たちはそのまま逃げるように元の道に戻り、心臓がバクバクしていましたが、後ろを振り返ることはできませんでした。私たちが戻ると、バンはライトも点けずに、暗闇の中へと消えていきました。海岸の風が耳に響き、何もかもが静まり返っている中、私たちはただ恐怖に震えていたのです。夜空の星は、何も知らないように輝いていました。
その後、海に辿り着いても、心の中は不安でいっぱいでした。あのバンは一体何だったのか、今でも記憶の中に影を落としています。恐怖は、静かに心の奥に潜んでいるのです。
そのバンは、もう二度と見たくありません。私たちは、あの夜のことを決して忘れられないでしょう。
彼は今でも時々、あの時のことを思い出し、震え上がることがあります。
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