
長編
ハルカの最後の挨拶
小鳥遊 2020年8月24日
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冬の寒い日に、最愛の娘ハルカが死んだ。
まだ6歳だった。
これからだって時に…なぜ…
●前日の夜
なんの前触れもなく夕飯を食べている時に突然倒れ…
『あれ?寝てる…?え、息してない…』
あまりにも突然だった。
意識不明のまま、病院に運ばれた。
(食事がダメだったの?なんで??)
心肺蘇生のおかげで心肺は、回復したが
意識は戻らず寝たきりの状態になった。
医者は、
『このままでは1時間ももちません。』
娘の心臓の回復が遅かったのか、脳死と判断された。
突然、1時間しかもたないと宣告され、心臓だけが動く娘を横に私は娘のお気に入りの絵本を読んで聴かせた。
すると、
娘の目から涙が。
私
『ハルカちゃん!!』
手も足も動かない娘。
目から涙が溢れおちた。
ーーー
それから数時間ー
朝が来た。
朝方に娘の心臓が止まった。
病室に響く心肺停止音ーーー
この日は、娘の大切な発表会がある日だった。
なんで。なんでなの。。
こんなに悲しい朝はない。
医者からは、『突然死』と告げられた。
病室では、私の泣き叫ぶ声と共に家族の泣き声だけが響いた。
静かに看護師が娘の点滴や機械を外していく。
霊安室に通されて、娘に白い布が被された。
(こんな姿見たくない)
そう思った私は、布を外して顔を見た。
娘は、寝ているかのようだった。
私『起きない?ね、朝だよ…』
娘『…』
返事などあるわけもない。
霊安室からお葬式業者が来て娘を家に運んだ。
お葬式の準備を始めた。
なんだか事務作業のような動きだった。
祭壇はこうする、写真は、こうする…
私は、その作業のような動きが苦痛だった。
お葬式の日程も無事に決まり、夜が来た。
娘をいつも寝ている布団で寝かせ、葬式場のスタッフが準備をした。
棺桶は当日。
それまでは、いつもの夜みたいに一緒に寝れる。
私は、まだ生きてるかのような娘の横でしくしくと泣いた。
目を閉じるのがおしかった。
目を閉じると朝が来てしまう。
朝が来るのがこんなにも怖いものだと思わなかった。
ーーー
2日続けて寝不足のまま朝がやってきた。
棺桶に娘が入る。
最後の体に触れるチャンス。
そっとほっぺたに手をやった。
ほっぺたも唇も柔らかく、まるで寝ているかのようだった。
私『…大好きよ…。』
私の一人娘だった。
いつも一緒にいた。
私が辛い時も、悲しい時も
いつも側にいてくれた。
全てが走馬灯のように思い出してぐっと我慢していたものが溢れ出た。
葬儀業者が棺の蓋を閉じる時だった。
私『いやだ…』
葬儀屋『…』
母が私の肩をそっと撫でた。
ーーー
娘は、霊きゅう車に乗せられた。
娘が通う学校の前を通り、式場へと運んだ。
時間が過ぎるのは早かった。
二日間でお通夜と告別式を済ませた。
小さな娘の体は、もっと小さ重なる骨壺に入った。
慌ただしかった数日間。
数人の友人が心配して家に夕飯を持ってきてくれて、一緒に夕飯を食べた。
私は、数日間全然寝れなかった。
きっと、ぼーっとしていたと思う。
友人は、気を利かせてDVDを見ようと言って
くれた。
その時だったーーー
テレビから雑音(ザザ、ザザザ…)
友人1『なんの音???画面がおかしいよね。。』
友人2『画面が止まった??』
(キィー…ガッチャン)
全員が目を合わせ、音のなる方へ振り向いた。
私『え…??』
明らかに玄関が開く音がした。
すると、テレビが元に戻ったのだ。
友人1『いま…だれか覗いてた?…』
友人2『いや…出ていった?そんなわけないか…』
みんなが時計を見たのは、0:00過ぎだった。まさか酔っ払いが覗いたとかは無さそうだし、どう考えてもそれなら、開ける時の音がするはず…
振り向いた時には、ドアは閉まった状態だった。
友人1『まさかとは思うけど…そんなわけないか』
私『え?なに?』
友人1『ハルカちゃん…』
友人2『や、やめなさいよ!』
私『…』
友人1『いや、ごめん。。』
友人は、そのあと不謹慎だったと謝ってくれた。
でも、全員が音が聴こえていて、玄関ドアを見るほどドアが開いたと感じたのだ。
私も、ハルカ…なの?と思うほどだった。
その日は、疲れて寝てしまった。
ーーーー
次の日
姉から電話がなった。
姉『今から行ってもいい』
姉がお線香をあげにきた。
姉『ごめんね。こんな時に。』
私『ううん、ありがとう。』
姉『いやね、昨日不思議なことがあったから。会いに行かなきゃと思って。』
私『なに?』
姉『夜中にね、私の部屋のドアがトントンと音がして。私もここ最近寝れてなかったから、疲れていたのかなと思って…うん、きっと疲れていたんだと思うんだけどね。。』
私『それだけ?全部話してよ。気にしないよ、大丈夫だから。』
姉『おかしいと思わないでね。ドアがトントンとなったあとね、何か声が聞こえたけど…それが…ハルカかと思ってね…。』
姉はそのまま泣いてしまった。
私は昨日のことを思い出し驚いた。
昨日同じようにドアから出て行くような気がしたと…自分でもそう思った。
そのまま昼過ぎに家を出た。
たまたま別の友人に会った。
その友人は昔からスピリチュアルな人だった。霊感があったりと。
その友人から衝撃的なことを聞いたのだ。
友人3『あのね。夢かもしれないけど、、、告別式のあった夜にハルカ来てくれたんだよ。』
友人の話によると、ハルカらしき背丈の女の子が友人の子どもの前に現れたのだ。
そして、その子どもを見て手を振っていたと。
時間は0:15頃だと言っていた。
友人の家まで行ったの?
そう思うと
娘は、みんなにお別れに行ったんじゃないかと思えてきた。
きっとそうだよね。。
大好きなお友達や大好きな家族に最後のお別れを言いに。。
ーーーーー
その日夜は、夢を見た。
病室のベッドの上で娘が起き上がって私の方に手を振っていた。
(ママ、バイバイ。ママ、ありがとう。)
そう言って、私が追いかけても追いかけても、娘には近づけなかった。
目覚めると私は泣いていた。
その夢から、娘の夢を見ることはなかった。
夢にでも会いたいそう思っても
なかなか夢には現れてくれなかった。
ーーーー
娘の死後、娘に弟と妹が出来た。
ふいに、下の妹が
妹『しー。ないしょ。』
と、独り言をいうときがある。
気にはしてないが、、、まさかね。
娘が会いに来てくれているのかと思うと嬉しい。
後日談:
- いろんな人にこんなことがあったと言われるたびに、私を元気つけようと思ってくれて言ってるのだと思った。 ドアが開くような不思議なことは、この日以来起きていない。
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