
中編
付いてきた爺ちゃん
匿名 2023年5月26日
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これは、私が大学3年生の夏の終わりに体験した出来事です。蝉の声も段々と落ち着いてくる9月の中頃、私の祖父が癌により息を引き取りました。以前より容態が徐々に悪化しており、ある程度覚悟もしていたことから、葬式等の日程調整、実行はスムーズに行われました。
というのも、自分は前々より仕事でI県に出張する事が決まっており、日程としてはかなりギリギリ。葬式が終わってその日のうちに車で出発し、ホテルに到着した時には既に0時を回っておりヘトヘトの状態でした。着替える事も忘れ、寝床についてから数時間。時刻としては2時前頃。突然部屋の内線電話が鳴り響き、自分は驚いて飛び起きました。 「こんな時間に、、。」と苛立ちが先行しましたが、すぐに疑問感が勝ります。こんな時間にフロントはあり得ない、、。上司からってこともほぼ確実に無いだろう。じゃあ誰が何でわざわざ内線で掛けてくるのか? 何より部屋の電話が、古臭いアンティーク調の電話だったんです。言わば、黒電話をボタン式にした様な感じで、呼び出し音は途絶えずずっと鳴り響くタイプ。次第に不気味さの方が勝り一時躊躇しましたが、とりあえず受話器を取ってみます。「もしもし?」•••問いかけに応答はありません。
受話器の向こう側ではずっと「ザザ..ザ..」と雑音がするばかり、、。 しばらくして違和感を感じます。普通、電話が切れてれば、「ツー。ツー。」と言う音がしますよね? いくら経っても雑音が聞こえるだけなんです。つまり、何処かには繋がっているんです。気味が悪くなり、そのまま受話器を戻して寝ようと再び寝床につきます。、、が約30分後、また電話が鳴ります。 恐怖を感じ今回は受話器を持ち上げてすぐに戻し、そのままフロントに電話を掛けました。率直に自分の部屋が「出るか」を聞くために。 まぁ従業員が「出ますよ」って言うわけないですよね。 一蹴され、念のため掛け軸の裏なども確認。曰く部屋では無さそうではあります。
そんなこんなで、案の定また電話が鳴り始めます。なんだか恐怖心も薄れていたので、今回は「もしもし?どちら様ですか?夜遅くに迷惑です。寝かせてください!」とキレ気味に言いました。、が、変わらず雑音。 なんとなしに、ふと思いつきで「…爺ちゃん?」と問いかけてみると、今まで変わらなかった雑音が、刹那「ボッ」とまるで受話器に息を吹きかけたような音がした後、そのまま電話が切れました。その後は、爺ちゃんが好きだったビールと、自分のタバコを2本テーブルに置いて就寝。念のため電話の元線は引き抜いておきましたが。(笑)
私は、爺ちゃんは車に一緒に乗ってきたんだと思ってます。 闘病中も、「旅行がしたいなぁ。皆んなでなぁ。」といつも言ってたし。 それに、火葬場から葬式会場に戻る時にお骨と御位牌を運んだ車でI県に行ったので。不気味ながらも、なんとも不思議な体験でした。
余談ですが、次の日の朝に改めて受話器を取って音を確認したところ雑音はせず、普通の電話の様に「ツーーー」と音がするのみ。また、内線のアラーム機能を前の宿泊客が設定した可能性も考えられたので、そちらも確認。機能しなかったので、念のためフロントで直接聞いたところアラーム機能は上手く機能しないとのこと。さらに、実はホテル側の手違いで、会社で予約してもらってた部屋が埋まっていたらしく、お詫びとして私の泊まる部屋だけその日のみ、最上階のちょっとお高めの部屋になっていたとのことでした。例のアンティーク調の電話は最上階の部屋にのみ設置されており、他の部屋のものは至ってモダン調の普通の内線電話。2日目以降、部屋も変わり不可思議な出来事はありませんでした。
誘われている様な、偶然とは思えない様な巡り合わせですよね。 爺ちゃんなりのお別れの挨拶だったんだと、今では思うことにしてます。
ただ、爺ちゃん、、、もうちょっと時間帯気にして欲しかったな。。
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