
長編
骨壺
匿名 2016年6月28日
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小学生の少女はこんな情報を仕入れた
【あるお墓の骨壺の骨粉を嫌いな人にふりかけるとその人を不幸にさせられる】
と、いうものであった。
早速仲のいいM子に学校で教えた。M子はその話に異常なまでに食いついた。
というのも、M子は担任に嫌がらせを受けていたからである。
「ねぇそのお墓、どこにあるの?」
興味を示すM子に嬉しくなって、場所もペラペラと教えてしまった…。
放課後。いつものように2人途中まで一緒に帰る。
「私、今日あたりそこに行ってみようかな〜」
「そこって…お墓に?」
「そうだよー担任を呪えるなら簡単なことじゃん」
どうやらM子は本気だった。このまま寄り道してお墓に行くという。
「やめなよ、やっぱ怖いよ」
「何言ってんの、K子が言い出したことじゃん」
「でも…」
「もういいよ、1人で行くから!」
M子はスタスタ歩いて行ってしまった。怖気づいたK子はそそくさと自分の家に帰った。
夜。部屋で宿題をしていると、お母さんが下の階から声をかけてきた。
「M子ちゃんのお母さんから電話よ」
電話を取ると、M子の母はひどく慌てていた。
「K子ちゃん、M子知らない?」
「えっ…」
「今日家に帰ってないのよ」
「知らない…です…」
「そっか、ごめんね」
ツー…ツー…ツー…
M子は本当にお墓に行ってしまったのだ。しかも家に帰っていない…。K子はなぜか知らないと答えてしまった。
私しかお墓のことは知らない…。行くべきなのだろうか。
翌日の放課後。K子は意を決して例のお墓に向かった…
まだ日の出ている夕方にお墓についた。ジメッとした雰囲気と薄暗い墓地の奥に、そのお墓はあった。
足を踏み入れていくと、一歩ずつ一歩ずつ拒まれているかのように足が重くなった。しかし行かなければならない。
そのお墓だけが特に異様な雰囲気に包まれていた。
意を決してK子は骨壺を取り出した。
蓋をあけると中は当たり前だが真っ暗だった。顔を近づけながら見ても、何の変哲も無い骨壺。
(な〜んだ、あの噂は噂に過ぎないのか)
K子は骨壺から顔を離し、元にしまうことにした。
が、しかし、様子がおかしい。
骨壺の中が光っている。まるで、映画館のスクリーンのように、映像が流れ始めた。
K子は慌てて顔を離そうとしたが、なぜかその映像に釘付けになってしまった。
それは、小さなアパートの部屋の中で、幸せそうに編み物をしている妊婦だった。
しばらくすると、部屋に誰かが訪ねてきた。妊婦の表情は一変、怯えているようだ。
映像の端に、男が見える。包丁を片手にしていた。男はそのまま、迷うことなく妊婦の腹を刺した。狂ったように何度も何度も…。
しかしふと男の動きが止まった。そして顔を真っ青にして走り去っていった。
殺された妊婦が取り残された部屋が映されている。
映像はどんどん妊婦に近づいていく。すると、K子は気づいてしまった。
死んだ妊婦の腹から飛び出している、まだ産まれるはずではなかった赤ちゃんに。
そこで映像は途切れた。
K子はその場から逃げようとしたが、金縛りにでもあったかのように動けなくなっていた。
そして、あろうことか小さな骨壺の穴の中に吸い込まれてしまった。K子の意識はそこで途絶えた。
目を開けるとそこは真っ暗だった。
K子はきっとここは骨壺の中だ、と思った。そしてM子を探すことにした。
暗い中、手探りで進んでいく。
すると何かが足に当たった。目を凝らして見ると、それは人だった。
しかも見上げると山になっている。
K子は、この人たちはみんな死んでいると直感で思った。
今度は後ろから何かがぶつかってきた。
見ると、それは赤ちゃんだった。しかし、赤ちゃんにしては大きい。
うーうー、唸りながら赤ちゃんはK子の身体をよじ登り始めた。そして、肩のあたりまで登ると、次の瞬間K子の肩にかぶりついた。
むしゃむしゃ、美味しそうな音を立てて赤ちゃんはK子を食べ始めたのである。K子は驚きのあまり声も出せず、痛みも感じなかった。
すると少し遠くから、コツコツとヒールで歩く音が聞こえてきた。その方を見ると、女性がいた。
「さあいっぱい食べなさい。お腹の中では十分な栄養をあげられなくて、ごめんね」
女性は赤ちゃんに向けてなのか、話し始めた。
「人間の腕や足や……心臓なんかもこの子の栄養になるのよね」
K子は薄れる意識の中、ふとさっきの人の山を見た。
そして、その中に埋もれている血だらけのM子を見つけた。
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