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長編

押し入れの中の…

しの 2018年3月30日
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これは私が中学の修学旅行で京都へ行った時に泊まったホテルで体験した話です。 かれこれ、15年以上前の体験ですが、今でも鮮明に覚えて居る程衝撃的でした。 当時、中3だった私達は京都、奈良を巡る2泊3日の修学旅行へ出掛けました。 観光をして、夕方ホテルへ戻った私達は部屋の割当表を担任の先生から受け取り、各自部屋に荷物を置きに行きました。 私の部屋は私を含めて6人。そのグループの中に小学生の時からの親友Mが居ました。 昔から霊感が強く、霊感の強い人間と一緒に居ると引っ張られて見えてしまう体質?の私は、Mのお陰で色々な恐怖体験をその後もする事になるのですが、このホテルでの体験が一番忘れられません。 エレベーターで7階へ上がり、部屋の前に着いた時、Mの顔が一瞬険しくなりました。 それに気付いた私は「どないしたん?又、なんか居る言うんちゃうやろな?」 M「う~ん。なんか嫌な気配はするけど、まだ解らないな」 私「他のメンバー騒ぐからあんま言うなや」 M「言わねーよ。どうせ、信じないし」 メンバーの一人が鍵を開け、順番に中に入りました。Mは部屋中を見渡し、「気のせいだったかな…?でも、今までこの感覚が有って外れた事無いんだけどな」 私「たまには外れる事も有るんちゃう。お前が見えたら、うちまで見えるんやから敵わんで!」 M「それは知らねーよ。お前の変な体質が悪い」 荷物を開けて着替え、食事の時間まで暫しの自由時間。6人で奈良の鹿が可愛かっただの、薬師寺のお坊さんの話が長かっただの話して騒いで居る内に食事、お風呂の時間になりました。 Mは自分の勘が外れた事が納得行かないらしく、部屋を見回しては首を傾げていました。 でも、部屋に入る前にMが感じた嫌な気配は決して気のせいでも、勘が外れた訳でも無かった事が夜遅くなって解る事になるのです。 布団を敷き終わり、寝る準備をした私達はまだまだ眠くなく、布団の上に円を描く様に座り誰彼ともなく修学旅行恒例?の怖い話を始めました。 私とMは襖の押し入れに背を向ける位置に座って居たのですが、Mはどうやら背後が気になっている様で落ち着かない感じで居ました。 皆一人ずつ、誰かの経験話やあからさま作り話の様な話をして盛り上がって居て、いよいよMの番になった時私とMと向かい合って座って居たメンバーの一人が「ちょっと待って!さっきからその押し入れの襖が五センチ位開いてんのが気になるんだよ!なんか怖いからM閉めて!」 と、言い出しその時初めて押し入れの襖が少し開いて居た事に気づきました。 他のメンバーが「襖、開いてたっけ?さっき、布団敷いた時ちゃんと閉めたよね?誰か又開けた?」その言葉に皆、黙って首を横に振りました。 Mが立ち上がり、襖を閉めようとしたのですが閉まりません。 M「やばいかも…」 Mが他のメンバーには聞こえない位の声で私に囁きました。 その瞬間酷い耳鳴りがして思わず耳を抑えました。 「早く閉めてよ!」と、言いながら他のメンバーの一人がMをどかして自分が襖を閉めようとしました。ですが、やはり閉まりません。 「何これ!なんか挟まったりしてるのかな?動かないんだけど!」 又、違うメンバーが「なら、一度開けてみたら?」と言うと何故か襖を開けようとしていたメンバーが襖から手を離し、「私、嫌だ。誰か開けてよ。」 「何で閉めようとしてたくせに開けるのは嫌なんだよ!」 「なら、あんた開けなよ!」 「嫌だよ!」 そんな言い合いが始まりました。 Mは引きつった顔で襖を見つめて居ます。 いつまでも、言い合いしてる二人のメンバーに又、違うメンバーが「もう、うるさいよ!いつまでも。なら、ジャンケンで決めよう!」と言い出し、言い合いをしていた二人も納得し、ジャンケンで誰が襖を開けるか決める事になりました。 ジャンケンの結果…襖を開ける役目になったのは私でした。 Mのさっきからの様子でこの襖の向こうに何かが居る事は私にも薄々分かって居たので、襖に触った途端、全身がゾワッとする感覚が有りました。 深呼吸をして、固く目を瞑り私が襖を開けたのと「開けるな!」と、Mが叫んだのが同時でした。 あんなに力を入れて閉めようとしてもビクともしなかった襖が開ける時には嘘の様な滑りの良さで開いたのです。私は固く目を閉じたまま。 襖が勢い良く空いた瞬間、「ぎゃあー!何あれ!」私とM以外の四人のメンバーが色々叫びながら、転がる様に部屋を飛び出して行きました。 私は恐る恐る片目をうっすら開けました。 暗い押し入れの上段に何か黒いものが揺れています。 (?)私は思いきって顔を上げ両目を開けてみると…私の正に目の前に髪の毛の長い女の顔が有ったのです。 しかも、逆さまで! 押し入れの天井からぶら下がる様に。 私は一瞬状況が飲み込めず逆さまの女と暫く見つめあってる様な状態。 やっと我に返り「いやゃぁぁーっ!!」と、叫ぶとその逆さまの女が何とも形容し難い、真似の出来ない様ないやらしい顔でニヤ~ッと笑いました。 その瞬間、腰が抜けそうになって布団の上に尻餅を着きました。 ズルッ… (コイツ、出て来る気だ!) ズルッ… ヤバイ!そう思った私は腰を抜かして震えて居るMの腕を掴み、「しっかりしろや!」と叫び立たせようとしますが、動きません。目はずっと逆さま女を凝視しています。 (どうしよう…うち一人逃げる訳に行かんし。ってか、アイツ押し入れから出て来る気やし) そんな時、さっき転がる様に逃げて行った四人のメンバーが担任の先生を連れて戻って来ました。 四人に引っ張られる様に部屋に入って来た先生は押し入れの中を見るなり物凄い叫び声を上げ、四人を振り払うと部屋を飛び出して行き、四人も先生を追いかける様に又、部屋から出て行きました。 逆さま女はさっき襖を開けた時には顔と首の辺りしか見えて居なかったのが、胸の辺りまで降りて来て居ました。 私はこれ以上この部屋に居たらヤバイ。と、思い固まって震えるMの頬を思い切りビンタしました。我に返って「痛えーな!何すんだよ!」と叫ぶMを立たせると思い切り襖を閉めMの手を引いて部屋を出ました。 廊下を走りながらMに「あの押し入れの中の奴は何者だ?」 M「知らん。でも、アイツはヤバイ!」 やがて、1階のロビーに着くと四人のメンバーと担任の先生、他のクラスの先生二人とホテルの従業員二人が居ました。 私とMも合流し、ホテルの従業員が話を始めました。 大体の話は、私達6人が泊まるはずだったあの部屋は普段は使用して居ない部屋である事。 修学旅行や、観光シーズンの時部屋が足りなくなった場合だけ使用する事。 だが、女の霊が部屋に現れ必ず騒ぎになる事。 等を話してたと思う。 何度もお祓いとかして貰ったが効かなかった。と。 過去にあの部屋で不倫の果てに捨てられた女の人が、その不倫相手との思い出であるあの部屋で自殺したそうです。 私達六人はその後、一人ずつ他のグループの部屋に割り振られて寝る事が出来ました。 後から聞いた話では、私とM以外の四人のメンバーと担任の先生には一切霊感が無かった様で、何故あの時あの女だけあんなにハッキリ見えたのか理解出来ないと言っていました。 Mの霊感に私同様引っ張られたのか… それとも、あの逆さま女がどかしても自分の存在を示したくて、全員に自分の姿を見せたのか… 私には解りませんが、Mは後の方じゃないか。と、言って居ました。 とにかく、恐ろしくておばちゃんになった今でもハッキリ覚えてる体験です。 このMのお陰で色々な恐怖体験をこの後もしているので、又暇が出来たらお話したいと思います。 長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。

後日談:

  • 私は大阪生まれで小学4年の時に東京へ引っ越した為、話の中で私だけ関西弁で話して居た通り、文章に書きました。

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