
中編
お地蔵さん
匿名 2016年9月8日
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これは私が4年前に実際に体験した話です。
私は勉強の合間に住宅地である近辺を音楽を聴きながら歩くことを習慣にしていました。しかしいつもと違い、その日は模試の結果が振るわなく少し自暴自棄になっていました。その時の気分のせいでもあったのでしょう。音楽プレーヤーをいじりながら歩いていると足が何かにぶつかりました。
「いてっ」
と思って振り返るとそこにいつもあるお地蔵さんが台座から落ち、横倒しになっていました。いつもなら何も迷うことなく直していたのでしょうが、背徳的の感情というのでしょうか
「そこにあるのが悪いんだ…いい気味だ…」
とすら思いながら少し面白くなってそのままにして散歩を続けました。
日が既に傾き始め、周りが少しずつ暗くなってきた時でした。暫くして聞いていた曲も終わり次に聞く曲は何にしようかと音楽プレーヤーに視線をうつして歩いていた時です。これかなと決めてその音楽を押すのですが反応がありません。
「アレ?なんだろ」
と思い何か違和感を感じてフッとまえを向きました。自分が今いる場所は木々が横にうっそうと並んだ小道で、先はどこまでも続いているように見えます。最初はよそ見してるうちに少し山道に入ってしまったのだと思いましたが、そんなことがあるのでしょうか。少し不気味になり道を戻ろうと後ろを振り返りました。息が止まりました。後ろには道などなく、ただずっと先まで広がる木々があるのみです。頭が真っ白になり只々後退りしてしまいました。
しばらく呆然とした後、頭にあのお地蔵さんのことが思い浮かびました。
「バチが当たったんだ…」
私は恐怖に駆られ続く道の方に猛ダッシュしました。
「もしかしたら出られるんじゃないか、歩きスマホをしてたからいつの間にか知らない所に出てしまっただけではないか」
そんな淡い期待を胸に息を切らして続く道を必死で走りました。しかしその期待はすぐに裏切られました。どこまでも続く小道、そしてその両側に整然と生えている木々、薄暗い空…どれだけ走っても、いくら時間が経とうとも景色は全く変化している様子を見せません。絶望的な気持ちが頭の中に立ち込めていきました。
私は遂に力が尽き息をゼエゼエ吐きながらその場に座り込みました。やるべきことはもうわかっていました。体を震わせながら地面に頭をつけ叫びました。
「すみませんでしたお地蔵さま!すみませんでしたお地蔵さま!」
その時です。そのまま耳につけていたイヤホンから微かに
シャラン…シャラン…
と音がなりはじめました。
シャラン…シャラン…
その音はだんだん大きくなっていくようです。不安と恐怖に息を詰まらせ、体を震わせながらただその場に動くこともできず、じっとしていました。音は更に大きくなり遂には耳がいたくなるほどの大きな音が響くほどになりました。
シャラン!シャラン!シャラン!
私は再び叫びました。
「すみませんでした!」
その時突然イヤホンが断線したようなブツリという音を立てて音が切れてしまいました。張り詰めた沈黙が周囲を覆い、それから暫くの時間が過ぎました。
「許してもらえたのか…」
少し安心して顔を少し上げた時です。再び血の気が引いていくのを感じました。そこには地蔵さんの足が見え、そして同時に易杖が地面に打ち付けられ、
シャラン!
と大きな音を立てるのがイヤホンからではなく直接頭の中に響き渡ったのでした。
ハッとして気づくといつもの散歩ルート、そしていつもと違いお地蔵さんが倒れています。私はお地蔵さんの横に腰を下ろしていました。当然そのあとお地蔵さんは元の位置に戻しました。ヤケになって周りが見えなくなると自分に返ってくるのかなって…もちろん歩きスマホも良くないですね…
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