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長編

先に棲み付いて居た者①

しの 2018年4月6日
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生き霊に取り憑かれた彼氏と別れ、居酒屋のバイトも辞めた私の親友Mが次に選んだバイト先はパチンコ屋でした。Mはそのパチンコ屋の常連客であったKさんと付き合って間もなく妊娠が発覚。デキちゃった結婚したのが、18歳。 KさんはMより6歳年上の24歳でトラックの運転手をしていました。 まだ、若い二人にはお金に余裕が無い為夫婦と生まれて来る子供と三人で暮らす新居を探すにもなるべく家賃の安い所を…と、探して居ました。Kさんの仕事が休みのある日二人は不動産屋さんの案内で何軒かの物件を見て回って居ました。 最初の二軒は綺麗な分家賃もそれなりに高く二人には厳しいと判断。 三軒目は多少古いアパートでしたが、その分家賃も最初の二軒に比べたら大分安い。 その上、「こちらに決めてくれるなら更に五千円お安くします!」と言う、不動産屋のおばちゃんの言葉にKさんは喜び…Mは不信感を抱きました。 そのアパートは同じ造りの建物が二棟並んだ造りで二階建て。部屋は下に三部屋、二階に三部屋の計六部屋でM達が案内されたのは右側の棟の二階の真ん中の部屋でした。 部屋の前まで来た時、Mは言い知れぬ胸騒ぎがしました。 不動産屋のおばちゃんが鍵を開け「どうぞ!」 まず、Kさんが入って行きました。 次にM。Mは玄関に一歩足を踏み入れた時点でゾクッと寒気がしました。 でも、今更「入りたくない」とは言えず、渋々入りました。Kさんはお風呂やトイレを見て回って居ます。 Mは部屋に行きました。 襖の押し入れ…。 中学の修学旅行の時の恐ろしい体験が脳裏に一瞬蘇りました。 襖を開けてみると…(?) 押し入れの上段に1枚の写真が有りました。 幼稚園か保育園かの遠足かなにかの集合写真の様です。保護者引率らしく、にこやかに笑うお母さん達も一緒に写って居ました。 皆、とても楽しそう。 ある一人を除いて…。 (何で、こんな所にこんな写真が?前に住んでた人の忘れ物か?) 暫く写真に見入って居ると、サッと不動産屋のおばちゃんがMの手から写真を奪い取り、持って居た書類を挟んだファイルにその写真を挟みました。 不審に思ったMは「今の写真何ですか?」と聞きました。 おばちゃんは「さぁ?前の方の忘れ物でしょう」 (忘れ物…。押し入れの中に?写真1枚だけ?) Mは、この部屋は余り良くないかも知れない… と、思いKさんに「この部屋は止めよう」と言うつもりでしたが、逆にKさんはこの部屋がとても気に入った様で、Mが止めよう。と言う前に「ここに決めようぜ!」と、言って来ました。 Mは「他も見てみたい」と言いましたが、結局Kさんと不動産屋のおばちゃんに押し切られる形で契約する事になったのです。 引っ越しを一週間後に控えたある日、Mから私に電話が有りました。 M「S、今から会えるか?」 私「あぁ。構わんで」 M「じゃ、今から行くわ」 ピンポーン♪ 私「開いてるで!」 やって来たMは、私にアパートが決まった事。一週間後に引っ越す事。を話して来ました。 私「無事に見つかって良かったやん!」 M「本当は引っ越したく無いんだけどな」 私「は?何でやねん」 M「何か…あんま良くない気がするんだ。あの部屋」 私「又、何か感じたんか?」 M「あぁ。…後は、写真かな」 私「写真??」 M「うん。押し入れの中にあったんだ」 私「押し入れの中に?どんな写真が?」 M「幼稚園か保育園かの遠足みたいなのの集合写真。保護者も一緒に写ってた」 私「前の人の忘れ物なんちゃう?」 M「私もそう思った。でも…その写真手に持った瞬間、鳥肌立った。それにさ、皆笑ってるんだよ?子供達も母親達も。でも…一人だけ笑って無かった。一人の母親だけ」 私「何か気持ち悪いな?」 M「だろ?その上、不動産屋のおばさんが奪い取って持ってたファイルに隠すみたいに挟んだんだよ」 私「オバハンに聞いたん?」 M「前の方の忘れ物でしょう。ってさ。なら、奪い取る必要無いだろ?あのババァ、絶対何か知ってるよ」 私「事故物件か?」 M「聞いても、違う。って言い張るだろうな。引っ越してから何も無きゃ良いけど」 私「お母さんには話した?」 M「いや。まだ、話してない」 私「引っ越す前に見て貰った方が良いんちゃうん?引っ掛かるんだろ?お前が引っ掛かる時は必ずなんかあるやん」 M「そうだなぁ…。まっ。近々話す」 引っ越し当日。 私も手伝いに行きました。 日当たりが良く、普通に明るい部屋でした。 でも… Mの言い知れぬ胸騒ぎは気のせいでは無かったのです…。 それは…Mが引っ越して三日目の夜に姿を現したのです。 その夜、Kさんは地方まで配送の仕事で出掛け不在。部屋にはM一人でした。 なかなか寝付けなかったMはコンポで好きな歌手の唄を聞いて居たのですが、音が途切れる様になり…やがて唄に混じって女の含み笑いの様な声が聞こえる事に気付きました。 「ふふふっ…」 (なんだ?) 「ふふふっ…」 コンポから流れる唄の合間に聞こえる不敵な笑い。 やがてそれがコンポから聞こえるのでは無いと気付き、Mは部屋を見回すと…… 居たんです。天井の角に。不敵な笑みを浮かべMを見下ろす女が… Mはその女の顔に見覚えが有りました。 そう。あの集合写真でたった一人笑って居なかった女。 Mは叫び声を上げると、部屋を飛び出しました。 近くの電話ボックスに飛び込むと、私に電話を掛けて来ました。 M「S!」 私「どないしたん?」 M「ヤバイ!やっぱあの部屋ヤバイ!」 私「どうヤバイねん?お前、今家か?」 M「外!アパートの近くに電話ボックスあったろ?その、電話ボックス」 私「今から行ったる!そこで待っとけ。行くから」 M「解った…」 私の家からMのアパートは自転車で10分位の距離です。 私は自転車を飛ばし、Mが待つ電話ボックスへ急ぎました。 電話ボックスに着くと、青白い顔のMが電話ボックスの中でしゃがんで居ました。 私「M!」 M「ごめん。こんな時間に」 私「ヤバイってなんなん?」 M「出たんだよ」 私「何が?でっかいGか笑?」 M「写真の女…」 私「写真の女?……。あっ!一人だけ笑って無かったって奴か?」 M「そう。写真では笑って無かったくせに、今日は笑ってやがった」 私「お前、腹冷えるぞ。悪阻は大丈夫か?」 M「悪阻は大丈夫。部屋…戻ってみるか」 私「送るよ」 M「はぁ?まさか、帰る気?」 私「まさか、泊める気?」 M「妊婦、放って帰る気?」 私「Kさん、帰りは?」 M「明日の夜中」 私「仕方ねぇなぁ…」 こうして、私はMのアパートに泊まる羽目に?泊まる事に?なり…恐ろしい一夜を過ごす事になるのです。 ー続くー

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