
これは、中学生の私が修学旅行で北九州に行った時の話です。
当時沖縄に住んでいた私は、人生で初めての県外旅行に胸が高なっていたのを今でも覚えています。
2泊目の宿泊先でそれは起こりました。
そこは「森との境にある、外観だけ見ればどこにでもあるような少し古びたホテル」といった感じで、1泊目に泊まった都市の夜景を羨望できる高台のきれいなホテルとの格差に、ほんの少しだけ、肩を落としました。
ですが、自分達の班が割り当てられた部屋の扉を開けた瞬間、少し戸惑いました。
部屋が和室そのものだったのです。
6畳ほどの一室には畳が敷かれ、窓のところは、縁側の名残のような、障子で仕切られた、板張りで、箪笥と、椅子とちゃぶ台のある、ちょっとしたスペースがありました。
旅館に行ったことのない私ですら、どことなく「旅館っぽいな」と、にわかに感じたのを覚えています。
荷物をまとめて置いて、他の3人もくつろいでいる時。私は"ちょっとしたスペース"の窓の景色を見ていました。
日が沈んで、庭であろう窓の外は暗く、手前に生えている木のこともあって、ほとんど何も見えませんでした。
ですが、その景色がどことなく"それっぽい雰囲気"だったので、私は級友を怖がらせてやろうと思い
「うわぁ!窓の外に人がいる!」
と言ってみました。
班員の内2人は「おいおいw」「冗談言うのはやめろよw」といった感じで、ある意味予想通りの反応でしたが、ただ1人、Yくんだけは違った反応を見せました。
こちらにゆっくり歩いてきて、窓の外をしばらく眺めた後
「わぁホンマやん!」
と言いました。
その時は、少しびっくりもしたけど、(あぁ、俺のくだらない嘘に付き合ってくれたんだな)と、あまり深くは受け止めませんでした。
それから全員が大浴場で風呂を済ませ、部屋に戻ってきた後のことです。
私は、さっきの冗談を冗談だと打ち明けました。
グループの2人は「だろうなw」「もっとマシな嘘をつけよw」といった具合で、これまた予想通りの反応でした。
しかし、Yくんだけは、またしても違った反応を見せてきました。
「いや、本当に見たよ?」
全員が静まりました。
「おいおいお前まで怖がらせる気か?」
1人が言いました。
「いや、本当に見たよ?
黒髪で、肩の後ろくらいまでの髪の長さで、黄色い着物に黒い帯の人」
ゾッとしました、あまりにも事細かに述べているのです。
黒髪までは、ある意味怖い話の定石のようなものですから疑えます。
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