
長編
クソカミ
匿名 2日前
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東北のA県での話。私は知人から近隣の村にある山菜採りの穴場を紹介された。なんでもフキやワラビの質のいいものが採れるとのことだ。私は山菜には目がないので、その週末の晴天にこれ幸いと車を走らせた。道中はずっと山林に沿って進む。緑が美しく、日々の暮らしに疲れた私の心を潤す。しばらく車を走らせると、知人の言っていた通り、路傍に砂利で整備されていて車を停められる場所があった。幸運にも先客はなし。リュックを背負い、手袋をして、準備を整えると、早速野に分け入った。
しばらく進むと、ベニヤ板にマジック書きの、見るからに手製といった趣の看板が立てられていた。
「便所 自由につかってください」
という文言と共に獣道を矢印が指している。こんな何もない場所になぜ便所が設置されているのだろうか。少し興味を引いたが、目的は山菜採りである。看板を尻目に、私はさらに奥に進んだ。
件の穴場にたどり着くとそこは話に聞いた以上の場所であった。ちょうど食べ頃の山菜がそこかしこに生えている。フキ、ワラビ、タラの芽、ウド――夢中になってリュックいっぱいに山菜を詰め込んだ。……少々採りすぎたか。山菜というのは滋味を味わうものであるが、裏を返すとあく抜きなどの面倒な下ごしらえがついて回る。そうした下ごしらえのことを考えながら、張り切りすぎていた自分自身に対して苦笑した。時計をみるともう1時間以上も経っている。グルルと腹が鳴ると便意を覚えた。その時になって、道中の看板のことを思い出した。せっかくなので、便所を使わせてもらおう。
少し戻ると例の看板の矢印が指すほうに進んだ。ところどころに「私有地」と立て看板があったが、自由に使っていいというので侵入しても問題ないのだろう。もうしばらく歩を進めると、工事現場にあるような仮設便所が見えてきた。便所のドアにもやはり、
「便所 自由につかってください」
と張り紙がされている。そのころには便意も最高潮に達していたので、
「使わせてもらいます」
と声を上げてドアを開けた。ドアにはベルが取り付けられていて、開くとカランカランと音が鳴った。清潔というわけではないが、手入れはされていて、紙も備え付けられていたのがとてもありがたかった。用を足すと、軽快になった体でドアを開いた。
そこには一人のおじいさんが立っていた。水の入った大容量焼酎のペットボトルを用意しており、
「手を洗って」
と声をかけてきた。なんと親切なのだろうか。私
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- けっこう怖いな