
中編
中央高速
匿名 4時間前
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たのだが……。
「どのへんだったか詳しい場所はわからないけど、とにかくいくつかある長めのトンネルに入る手前だったと思う」
それはいきなりだった。
晃君はいきなり誰かに、後ろからしがみつかれたのである。
「気味が悪いとか怖いっていうより、とにかくもう、ハンマーで殴られたみたいに脳天までビクーンときて、その拍子にパニックになって……」
スピードを出していたため前輪がふらつき始め、きわめて危険な状態に陥ってしまったのだ。
それでも晃君は、気力と勘と体力と経験、持てる力を総動員し、やっとの思いで正常な走行に戻した。
「車体を立て直すのにものすごく時間がかかったような気がした……。
ああいうときってすべてがスローモーションのように感じる。実際はほんの一瞬だったと思う。で、やっと元に戻せたとき、」
バックミラーに痩せた老人の顔がスッと映ってにやっと笑い、そしてすぐに消えた、という。
「これもほんと一瞬、よぎった、って感じ」
……車体はしっかり平衡感覚を取り戻していた。
それからも何台か車が追い抜いていったが、もう何も言われなかった。
「もう消えたんだ、消えたから大丈夫なんだ、って自分に言い聞かせながら走った」
幸運にも晃君は、なんとか中野のマンションにたどり着けたのだが、キャリアの浅いライダーだったら絶対に大事故になっていたはずだ、という。
「それから家に帰ってからも何も起こらなかったから、僕のはあきらめて、中央高速を走っている別のバイクに乗り換えたんじゃない?」
その晩大事故があったかどうかは調べて無いのでわからない、と晃君はいうのだが……。
バイク乗りといえば、ライダーの間で有名な幽霊話が存在する。
これは中央高速だけでなく、都内でも聞くことのある噂なのだが、―走っていると、異常に速いバイクが後ろから迫って来る。
ものすごく速くて、いくらスピード自慢のマシンでも勝てない。
やがて必ず追い越されるわけだが、その時に、若い男のこんな猫なで声が聞こえてくる。
「アブナイヨ~、キヲツケナ~」
どんなに風が強かろうが、走行音がうるさかろうが、その声ははっきりと耳元で聞こえるそうだ。
そしてその声を聞いた者は必ず、その日のうちに大事故を起こして死ぬという。
これは聞いた話だが、都市伝説として体験した話なのか、本当にあった怖い話として体験した話なのかはわからないが、中央高速について、怪談はあとをたたない。
この怖い話はどうでしたか?
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- 亡くなってるのにその声を誰かに話したのは誰なの?ぴょん吉
- この話、文庫本で読んだことがありますよ!ルシ
- なんで危ないって教えてくれるのにその後事故るんやろwあ