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長編

消えた先行者

しもやん 3日前
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常の物理法則に従っていない。そんな印象を受ける。  いずれにせよ静馬ヶ原を通って下山する気にはとてもなれない。北尾根ピストンを放棄し、伊吹山山頂から南東へ伸びる尾根を経由して春日村古屋へ降りるルートを構築した。逃げるように山頂を目指す。  到着が15:30と遅かったのと、滋賀県上野からのメインルートが通行止めになっている関係で、伊吹山山頂には異例の静けさが漂っていた。森閑と静まり返った山頂で琵琶湖をぼんやりと眺める。冬の弱々しい陽光を反射して、湖面が白熱したように輝いていた。  誘惑に勝てず、わたしは静馬ヶ原のある北尾根方面を振り返ってみた。――なんの変哲もない澄み渡った青空が広がっているばかりであった。      *     *     *  次第に暮れなずむ山中を下りながら、わたしはおぼろげながら静馬ヶ原で起きた怪現象への回答らしきものを得た。  なんであれ、ある現象が存在しないことを証明するのは原理的に不可能である。たとえば白いカラスがいないことを証明するために、黒いカラスを世界中からかき集めてきたとしても、依然として白い個体が発見される可能性は残ってしまう。  対照的に、白いカラスがいることの証明は容易だ。白い個体を1羽だけ見つけてくればよい(それと同時に〈白いカラスがいない〉という仮説は自動的に棄却される)。  物理法則すら不在証明不可能性の例外ではない。重力は質量を中心に働き、例外はないものと考えられている。そう〈考えられている〉だけで普遍的な事実なのかは誰にもわからない。  150億光年という茫漠たる宇宙空間の隅々まで調査がなされ、〈重力が理論通り均一に質量中心へ向かって働いている〉と証明されたわけではないからだ。  わたしが遭遇した怪奇現象はもしかしたら、現代物理理論のほころびだったのではないか? 原則、重力は地球の中心へ向かって働いているけれども、ある一定の条件下でそれが逆転――すなわち斥力として作用することがあるのではないか? 耳からの出血は、重力を感知している三半規管が斥力を受けて機能不全に陥ったからだと強弁できなくもない。  しかし人や建物が空へ向かって落ちていったなどという事例は、(信憑性のないものを除いて)聞いたことがない。これは少なくとも、重力逆転現象が平地ではほぼ起こらないことを意味する。  では山ではどうなのだろう。標高の高い場所ではわずかながら、重力が弱くなるのは

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