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長編

消えた先行者

しもやん 3日前
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紛れもない事実である(相対論的に、質量中心から離れれば離れるほど重力波は赤方偏移する)。そうであるならば、重力のバグが高所で起きたとしても不思議ではない。  昔から山では不可解な神隠しや失踪が後を絶たない。彼らはどこへ消えてしまったのだろう。道を見失って登山道外の山腹で骸と化しているのか、それとも――。  わたしはさらに突飛な考えを抱いてしまう。先行者5人が忽然と消えたのは、空へ落ちていったから「ではない」、という妄念を振り切ることができないのだ。  彼らの行動には理解を超えた点が多すぎる。真冬の沢に分け入り、屹立する断崖を乗り越してバリルートを開拓し、スノーシューなしで突き進んでいく無謀な登山者。わたしには彼らがまともな精神を保っているとはとうてい思えなかった。  5人は重力のバグに偶然巻き込まれた被害者だったのだろうか? そうではなく、みずから望んで例の現象を引き起こしたのではないか。静馬ヶ原に高次の存在――地球外生命体であれ四次元空間の住人であれ――を呼び出すためには、困難な道のりを経てあの場所に到達するという条件があったのかもしれない。先行者たちはそれを実行し、彼らの望み通り、なにかが迎えに来た。  人ならざる者である〈なにか〉が。  例の現象が斥力の作用だったのか、高次の存在の仕業だったのか、あるいは未発見の力学が働いたのか、わたしにはわからない。単に白昼夢を見ていた可能性もある(むしろそうであってほしい)。  しかし、もしあれが現実だったとしたら。先行者たちはチャネラーであり、首尾よく高次の存在とやらとのコンタクトに成功したのだとしたら。山には怪異が棲むという言い伝えが真実味を帯びることになる。  あれ以来、人の来ないうら寂しい山を歩いているとき、わたしは何者かがあたりに潜んでいるような気がするようになった。人ならざる者、人類をはるかに凌ぐ知的生命体の気配を。

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