
長編
キャンプ場での話
ホラー 2017年6月5日
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長文なんで読みたくない方はスルーして下さい。
これは大学時代の話です。
大学のサークルの一環で、キャンプをすることになった。
場所はとある田舎のキャンプ場。
来て分かったのだが、正確に言えば、以前キャンプ場だった跡地。
近年田舎は特に過疎化が進み、キャンプ場管理をする自治体も高齢化してるからなのか、そのキャンプ場は「○○キャンプ場」の看板が朽ち果てて倒れた状態だった。
当然、辺り一帯の草木は伸びるだけ伸びて、枯れた枝なんかも散乱してる酷い荒れ様だ。
自分は帰っても良かったが、折角来たんだからと半ば強引にキャンプをすることになった。
最低な場所だ…
…ところで、こんな状況下にあって、ちょっと腑に落ちない変なことがあった。
と言うのも、このキャンプのメンバーは、基本的には自分を含めたサークルメンバーで構成されているのだが、誰が呼んだのか知らない奴らが数人いた。
サークルメンバーの、知り合いの友達みたいな感じなんだろう、同じ大学奴なのかも知らない。
ただ、メンバー連中の話を読み取る(酷い場所なんで揉めてる)に、どうにも「このキャンプ場が良い」と勧めた奴がサークルメンバーじゃない誰かである点だ。
そしてその張本人がF(仮)という奴だと分かった。
Fはあまり喋らない癖に、(このキャンプ場について)皆からチクチク弄られると、いきなり口を尖らせてキン高い声を発して「知らんやん!」と、まるで小学生のような台詞と喋り方をする変な奴だったのだが、腑に落ちないというのは、Fが何故こんなキャンプ場を勧めたのか?の理由が「近くに墓場があるから」というものだ。
「(はぁ?)」俺は内心呆れていた。
ところが、皆から総スカンをくらいサークルメンバーの誰もがFを嫌うだろうと思っていたら「じゃあ夜は肝試しに行こう!」ということになってしまった。
だが、ラッキーなことに、その夜は雨が降り出し肝試しどころでは無くなった。
行く当ても無いから皆なでテントに籠りながら怪談話やら、文系の○○が可愛いとか、そういう他愛ない話で盛り上がったのだが…
さて…ここからが本題。
テントは3つで、俺はその1つのテントの入口側から2人目で寝る事になった。
入口側はサークルメンバーの知り合いA(仮)。
就寝時間になって5分もしないうちから、同じテントのある奴がイビキを掻き出し、俺は「寝れない地獄」が始まる。
「うるせーなw」と呟くとAも鼻で笑った。
まぁ最も、眠くないし外は小雨がずっと降ってテントを叩くから別に良いのだが、それから小1時間もしないくらいに、別のテントから誰かが外へ出たのが分かった。
雨音とは別に足音がする…小便かな?
俺は目を閉じながら「(雨さえ降ってなければ、俺もテントから出て夜風に当たるのになぁ)」と思っていたら、隣のAも未だ起きてたみたいで、小声で「起きてる?」と聞いて来て「今外に出た奴、あれFだよな?」と言って来た。
外街灯も月明かりも無い…
俺は小声で「何で分かるんだよ?」と聞くと、Aは「懐中電灯で顔が見えた」。
足音の方向を耳で追ってたのか、Aが「アイツ向こうへ歩いて行ったぞ!」と、Fは墓場の方向に向かったらしい…
「行ってみるか?」寝れないし、そもそも何をしに行くのか興味があったのはAも同じらしい。
2人して懐中電灯は持たず、無くても何とか薄明かりで判断は出来る。
50m先か、もっとか分からないが、ライトを左右に照らしながらFが向こうへ歩いてるのは直ぐ分かった。
Fは俺らに尾行されてる事には気付いて無いが、ボウボウに生えてる草木がこんなカタチで役立つとは。
結構歩いたように思う。
突然、Fが走り出しのでビックリしたが、どうやらそこが墓場らしかった。
Fは急に止まると、ライトで墓標の石碑?を順番照らしながら移動し始めた。
何をやりたいのかさっぱり分からない。
Fとの距離、大体20m、Fは何かを言いながら墓標を探してる…
墓参り?アイツはここの出身なのか?
そんなことを考えながら見守ってると、Fは奥の方の1つの墓標にピタリと止まり、墓標を確認してるようだ。
よく分からないので、少し近付く…
俺もAも、何も喋らない…無言で少しずつ近付く…
Fは墓標の下にしゃがんでるようで姿が見えない…
拝んでるのかな?と思ったが、5分…10分…立つ気配がない…
痺れを切らして横へ回り込んでみる…
小雨が足音を搔き消してくれる…墓標と墓標の間に隠れるように移動して、ようやくFの姿が見えた。
ライトを地面に置き、付けっ放しの光に照らされたFは、地面を掘ってた…
何か…凄く見てはいけないような光景だった…
だって、手で掘ってるんだから…
墓荒らしをしてるのかと最初は思ったが、それなら計画的にスコップくらいは持って来るだろう。
一体いつまで、何処まで掘る気なのか?
俺らは無言でその様子を見てた。
時計は既に3時を回ってる。
相変わらずFは懸命に地面を掘り返してる…何かを言いながら…
何か…短い…ホイ?…ホイと言ってるのか?
掘りながらホイホイ言ってる?
Aに聞いてみても分からないらしい…Aもあれから黙ったままだ。
Fは一目散に相当掘って、自身の身体が地中に埋まるくらいまで掘り返してる。
時間は4時をとっくに回ってる。
だが、時間の経つのは凄く早く感じる。
それだけこの光景が斬新だったからだろう…
…と、突然バキッ!っと割れる音がした。
バキバキッ!…木?…棺桶か?
どうやらそうらしい、Fは完全に墓荒らししてる!
金目モノでも盗むつもりらしい。
…しかし、その次には奇妙な音が聞こえた…ポキッ!
…ゴリゴリゴリゴリ…ポキッ…ゴリゴリゴリ…
なんだ?あの音は?
辺りはもう明るくなり始めて、時計は5時をを回ってる。
さすがに見にいくわけにも行かず、帰るわけにも行かず2人して奇妙な音を聴きながら時間を潰した。
奇妙な音が聞こえてから30分ほどした後、Fは穴から這い上がり、来た方向へ歩き出した。
俺らは横に回り込んでるので、奴を右から左へ歩いてるのを見てる事になる。
Fの姿が完全に見えなくなったので、その墓標を見に行く事にした。
土が被さってるものの、案の定、墓は荒らされ木製の棺桶もバキバキに折られてる。
古く腐ってるから容易に割れるんだろう。
そして、その棺桶の中にある白骨は散乱してるが、どうやらFは、この骨を喰ってたようだ。
奴が言ってたのはホネだったのか。
さっきの墓掘りの光景があまりにも恐怖過ぎて、明るくなったこの光景は、怖さよりも無惨の一言だった。
俺とAは、この事実をサークルメンバーに報告して、信じないだろうからここまで連れて来ようと決めて、キャンプ場へ戻った。
キャンプ場へ着いたのは6時、もうすっかり明るい。
メンバーも起き出してる。
全員が起きたのを確認して、さっき体験した事を説明し始めた。
当然ながら皆な信じない、「は?何言ってんの?お前光線」を浴びつつ、Fを見ると…あれ?…Fがいない!?
…Fはそこにはいなかった。
帰ってるとばかり思ってたが…
後から分かった事だが、メンバーに確認すると、Fを誘って連れて来た奴はいないことが分かった。
そしてFの友達や知り合いも、もっと言えば知ってる奴はいなかった。
どうやって俺らがこのキャンプ場へ来たのか?
Fが勧めただけだ…
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