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中編
踊り場の「なにか」
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踊り場の「なにか」

2019年10月31日
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先日の出来事です。

私は営業職で移動中に電話することが多く、この日も電車を降り、改札を出たタイミングでお客さんと電話を始めました。

利用していた駅は都内でも有数の規模でデパートに直結しており、私は人混みを避けるようにしてその階段の踊り場へ移動しました。

このデパートの階段踊り場は今思えば珍しくガラス扉が設けてあり、三畳ほどの閉鎖的な空間で空気は淀んでいました。

こちらとは逆方向に少し行けば開けていて、エスカレーターも設置されているため、普段ここを利用しているお客はあまりいないのだと思います。

その証拠にハンガーとビニールが雑に放り込まれた段ボールが置いてあったり、埃っぽかったのを覚えています。

不自然に天井から1メートルほどの仕切りが突出していて、もともと薄暗い蛍光灯の光をさらに遮っていました。

立ち止まって電話をしていた私は突然、生暖かい空気の膜のようなモノがその場を包み、空気を重くした感覚に襲われました。

視覚ではすぐガラス扉の向こうに明るい改札口があるはずなのに感覚的にはとても遠くにあるような、もしくは本当は存在せず映像を見えいるような感覚です。

私は『これは何か嫌だ』と思い、

その場から抜けようと思いました。

その時、耳鳴りがし、すぐ後ろで『ジリ、、ジリ、、』と音がしました。

思い返すとそれは髪を指でつまんでよじるような音だったと思います。

もちろんそれは私自身の髪ではなく、別のモノの音でした。

とっさに振り向いてしまった私は何かに呼ばれたかのような感覚で視線を下に落としました。

そこには黒い人の様な「なにか」が壁に寄っかかるように座っていました。

髪は長く、うつむいていて、床に垂れた自身の髪で肘から下、下半身は隠れていました。

本来であればその「なにか」が髪をよじる音など私には聞こえる距離では無かったと思います。

この「なにか」はうつむいたまま動かずにいました。

言葉で言い表すのが難しいのですが、

この空間が私とその「なにか」を交錯させているような感覚でした。

それでも私は電話を続けていたと思います。

恐怖も相まって意識が希薄になっていたので記憶が曖昧です。

耳鳴りがより強くなり、私は震えた脚で何とかその場から逃げ出せました。

ガラス扉を抜けた瞬間耳鳴りも止み、

やっと息ができたように感じました。

電話していたお客さんからはその時、

「電波が悪かったみたいで、途切れ途切れだった」「吐息みたいな音しか聞こえてなかった」と聞きました。

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はじめまして、よろしくお願いします。

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