
新着 中編
あの遊び場の子
鈴木アンバサダー 4日前
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今から十四、五年ほど前。
私が五歳くらいの頃の話です。
兄と一緒に、あるショッピングモールの中にある習い事に通っていました。
送り迎えはいつも母がしてくれて、少し早めに着くと、カフェで軽く食べたり、隣の子どもの遊び場で兄と遊んだりしていました。
兄のレッスン時間と私の時間はずらしてあったので、兄が終わるまでのあいだ、私は一人で遊び場にいることが多かったんです。
その遊び場はわりと広くて、どこにでもある普通の場所でした。
ただ、ひとつ特徴があるとすれば――中央に、大きなトンネルのような遊具があったことくらい。
時間帯によっては人が少なく、待ち時間の間はほとんど貸し切り状態。
私はそこでひとり、夢中になって遊んでいました。
その日も、いつものように遊んでいたときのことです。
ふと気づくと、少し年上に見える男の子がいました。
顔にはずっと、ニタニタとした笑みが浮かんでいました。
最初は気にせず遊んでいたのですが、いつの間にか、その子がすぐ横に来ていました。
驚いて母の方を見ると、母はいつも通り休憩スペースで携帯を見ています。
私が視線を向けると、気づいて手を振ってくれました。
けれど――なぜだか、そのとき、母にはその子が見えていないような気がしたのです。
胸の奥がざわっとして、足が冷たくなりました。
なんとなく怖くなって、母のもとへ駆け寄りました。
振り返ると、その子はトンネルの入口のところで、ぽかんとしたような顔でこちらを見ていました。
その表情が、どうしようもなく気持ち悪かったのを覚えています。
私は母に「お菓子が食べたい」と言って、その場を離れました。
無理やり話題を作って、遊び場には戻りませんでした。
そのまま兄の習い事が終わるまで、別の場所で時間をつぶして帰りました。
次の週。
その日も、ほぼ同じ時間からのレッスンでした。
まだ幼かった私は、先週の男の子のことなどすっかり忘れていました。
母に「遊び場で遊んでくるね」と言い、いつものように中へ入っていきました。
ジャングルジムに登ったり降りたりしながら遊び回って――ふと、大きなトンネル遊具を見て「久しぶりに入ってみよう」と思いました。
トンネルをくぐり抜け、出口に手をついたそのとき。
――頭の上、トンネルの上のほうから、何かの気配がしました。
「誰かいる」と思い振り返ると、そこにいたのは先週の、あの男の子でした。
心臓が跳ねて、私はその
後日談:
- 本作を読んでいただきありがとうございます。 最初にも書いてあるように、この作品は私の幼少期の話で実話です。 十数年たった今、怪談話が好きな父と話してみると話さずに笑っておりついてくる、というのはおそらく幽霊ではないかと言っており、私自身も幽霊であってほしいです。たまたまその幽霊と波長があったのでしょうか。 今現在幽霊のようなものは見えません。
この怖い話はどうでしたか?