し、気味の悪い音はする。情けない話なのだが、今度は音の出所を探ろう何ぞ、とてもじゃないが俺には思えなかった。俺はもうパニックで車を走らせる。警察だ！警察に何とかしてもらおう！怪談ならお寺とか何だろうが、俺はそんなもんに頼ろうとは思えなかった。普段から人がいるかもわからない、そして寺といえば夜は絶対暗い。ヤダよ？救いを求めて行ったら誰もいなくて、化け物めいた赤ん坊みたいな鳴き声のする車と真っ暗闇におきざりだなんて。第一、通り過ぎるだけの場所で寺や神社への道も場所も知らない。俺が身近で最も信頼する力、数の暴力でどうにかならないならお手上げだ。おまけに通り道に派出所か出張所のような場所があるのを覚えている。しかし、そこまではだいぶ距離がある。 俺は早くこんな恐怖から解放されたい一心で、この道を走ると存在する、怖い話の化け物どもが苦手そうなものを頭の中で探した。俺が車を走らせてる間も鳴き声はする。行きに音がし出した辺りを越えた。音はする。民家のある辺りまで来た。怪談ならここでしなくなる筈だ。残念、まだ音はしやがる。一体どうすればいいのやらー…そして、まだこの道の先を思い出す俺の頭の中にあるものが浮かんだ。この先、お地蔵様が不思議な位並んでいる場所があるのだ。道の守り神なら何とかしてくれるのかもしれない。俺はそこへと急いだ。するとどうだろう。お地蔵様が並んでいる2、300メートル程手前に来たところで、鳴き声は唐突に止んだ。俺は多分お地蔵様のおかげなのではないだろうかと感謝しながら通り抜けた。とてもじゃないが、車を停めてお礼をしよう、だなんて思えなかった。そのまま車の中から頭を下げてお礼をし、逃げ帰った。 その後、その車で弟を同乗させてその道を何度か通ったが、あの音はしなかった。