
叔母が水門の管理をしていたので、台風前の備品確認を手伝いに行ったことがある。
七月の午後で、窓を開けても潮風がべたつくばかりだった。叔母は町の会合に呼ばれて、僕ひとりで倉庫の在庫を数えることになった。
そこで、誰もいないはずの奥から、カン、カン、カン、と金属を叩く音がした。
倉庫には古い道具が多い。風で何かが揺れたのだろうと、最初は気にしなかった。けれど少しして、また三度鳴った。
その音で、実家にいたウサギを思い出した。
僕が中学生のころ、保護したウサギをしばらく飼っていた。餌入れを前脚で叩いて、餌を催促する癖があった。亡くなったあと、餌入れは捨てられず、僕が管理所の物置に置かせてもらっていた。倉庫の奥にあるはずだ。
音のする方へ行こうとしたが、妙に息苦しくなった。汗をかいているのに、指先だけが冷たい。床に座り込んだところで、また三度、音がした。
次に目を開けたとき、病院のベッドにいた。熱中症で意識を失い、叔母が戻らなければ危なかったらしい。
叔母は、管理所の外まで響く音を聞いて、倉庫を見に来たと言った。僕を見つけたあと、音の出どころを探したが、餌入れは棚の奥で、周りに何も倒れていなかったそうだ。
「三回ずつ鳴るんだよ。あんたを見つけたあとも、しばらくね」
それを聞いて、あの子が知らせに来たんだと思った。
ただ、退院してから餌入れを確かめに行くと、棚のいちばん上に置いたはずなのに、床の真ん中に伏せてあった。
内側には、乾いた餌がひと粒だけ残っていた。
あの子が生きていたころ、餌入れを叩くのは、空になったときだけだったのに。
それ以来、倉庫では音がしない。叔母も僕も、餌入れを外へ持ち出す気にはなれずにいる。
あの三度の音が、僕を呼んだのか。それとも、何かを食べに来たのかは、今でもわからない。まあ、助かったんだからいいだろうと思うことにしている。餌は、あれから一度も補充していない。
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