
長編
京都の夜の噺
匿名 2日前
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40年以上前の話で恐縮です。
当時私は京都市内にあるD大に通う下宿生でした。
大学は市内の中心部にあったのですが、キャンパス近くの下宿は軒並み部屋代が高く、余裕のない私は市内の北の端にあるD大指定の月1万円の安下宿に暮らしていました。
この下宿は養蚕小屋を改装したものですが、それでも貧乏学生にとって月1万円の家賃は魅力であり、15部屋ありましたが、私が居た6年間は常に満室でした。
安いだけあり台所、風呂、トイレ、洗濯機はすべて共同。下宿生は苦学している人ばかりで、新しい入室者でも1か月もすれば家族同然のような付き合いができました。
あれは忘れもしない1983年の5月13日の出来事です。前日の夜9時頃から下宿生4人で日課の麻雀に興じていたのですが、半チャンが終わったあたりで誰かが「腹減ったし、牛丼食べに行かへん?」というものですから、それなら他の下宿生にも声を掛けようということになり、1人増え、バイク4台(1台はタンデム)を連ねて私のバイト先でもあった北大路の牛丼屋に向かいました。
牛丼を食べ終わり、店を出ると夜の風が心地よかったので遠回りして帰ろうということになり、普段はあまり通らない深泥池(みどろがいけ)を通って帰ることにしました。
私がしんがりを走り、深泥池のすぐそばに差し掛かった時です。先頭を走っていたタンデムのバイクから悲鳴のような急ブレーキ音がキーッと鳴り響き、大きく道の反対側にハンドルを切ったかと思うと、そのまま転倒してしまったのです。そして運転者もタンデムの人も進行方向に数メートル引きずられ、危うく池(実際には沼ですが)へ続く草むらに転落するところでした。
私も他の2台も急いでバイクを止め、先頭に駆け寄りました。
幸いにも二人ともジーパンが破れたことと擦り傷ぐらいで大したことはなくホッとしましたが、運転していた人が「あそこ、あそこ!」と指をさして叫びながら、バイクを起こしエンジンをかけ、この場を逃げ出そうとしています。何を慌てているのか理解できずにオロオロしていると、起こされたバイクのヘッドライトが指さされた方向を照らします。
そこには、頭、顔、腕と体中が血だらけになった、私たちと同じくらいの年恰好の男性が、道路に座り込んでいました。
皆思わず叫び声を上げ、バイクにまたがりこの場から遠ざかろうとしました。が、これはオバケの類ではなく、よくよく考えると、この人は事故か事件に巻き込まれたのでは
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