
長編
僕とSさん
匿名 2日前
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怖いというか、不思議な話です。はっきりとしたオチもないですが、それでも、自分にとっては忘れられない話を一つ。
もう20年くらい前の話です。当時僕は大学三年生でした。母子家庭で実家通いだったのですが母親とはそりが合わず、ほとんど会話しない状態。さらに、当時大学一年生だった妹が毎日のように彼氏を家に連れてきていて、僕にとって家は居心地のよい場所ではなく、よく友人宅やネットカフェ、漫画喫茶などに泊まっていました。
その日も、漫画喫茶に泊まることにしました。アルバイトが終わって21時ごろ店に到着。受付がかなり混雑していたので、エントランスのソファに腰かけてしばらく待っていると、突然、隣に腰を下ろしたおじさんに声をかけられました。
「こんにちは。よくここ来てるよね。あー、お金結構かかるでしょ。値上げするらしいしね、この店。近々。僕もよく来てるんだ。困るよね。ところでさ、いいバイトがあるんだけど、興味ない?手っ取り早く稼げるんだよ」
見た目は40歳くらいで、半年は切っていないだろう蓬髪からは切れ長の一重がかろうじて見えていました。ヨレヨレのシャツ、猫背も相まって、まるで不審者でした。
怪しい勧誘を受けることは時代も時代、ちょくちょくあったので、例によって無視してソファをから離れようとしました。すると、おじさんは僕の腕をキュッと掴み、
「待って! まだ受け付け混んでるしさ、話だけでもきいてよ」
と言ってソファへ引き戻し、一方的に自身の身の上話から滔々と語り始めました。
おじさんはSという名前でした。聞いたことのない珍しい名前でした。
以下、おじさんをSさんとします。
Sさんは都内の大学を卒業後、大手メーカーに就職し、順調にキャリアを歩んでいたが、ある時、難病を患っていることが発覚。病気は寛解するも、大手メーカーを退職。その後は職を転々とした末、現在の運送アルバイトをかれこれ10年続けているとのことでした。
「今のバイトはね、力仕事だけどそれなりに金が出るんだ。おっさんの一人暮らしには十分すぎるくらいね。運転免許は…持ってるよね? 実は今人手が足りてないんだよ。ここであったのも何かの縁だからさ、一緒にやってみないか?」
Sさんが一通り語り終えると、受付は空いていました。僕はいいタイミングだと思い、勧誘を丁重に断ってから今度こそ立ち上がると、
「わかった! 今は興味なくても、後々やりたくなるかもしれない
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