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長編

落ち武者のトンネル

(゜Д゜) 2021年1月29日
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夏に男2人(A・B)女2人(C・私)の計4人で、地元にある落ち武者が逃げ込み隠れたという伝説のトンネルへ肝試しに行った時の話です。 そのトンネルは道幅が狭くて車など通れず、歩いてすれ違うのも肩が触れ合ってしまうほど。 壁は岩がむき出しで、150m程のトンネルを抜けると海に繋がっているのですが、断崖絶壁になっています。 柵はあるものの、何とも頼りなさげな作りなので心霊関係なしにも少し怖い場所です。 一応観光地なので昼間はそこそこ人が来るようですが、夜になると周りに民家があるわけでもなく外灯も少ないし、トンネル内にライトなど付いていないので真っ暗。 誰も近付きません…私たちのような肝試しに来るくらいしか。 肝試しを提案してきたのはAでした。 友達が例のトンネルで落ち武者を見た…と。 まあ、眉唾物と言うか、ぶっちゃけ「ないないないない」とは思いましたが、暇だし行ってみようかとなりました。 現場に着くと話通り真っ暗で、トンネルの先の出口がぼんやり見える程度。 一応明かりとしてちいさな懐中電灯を100均で2本購入しては来ましたが、何とも心許無く。 トンネル内は狭いので一列になって進まなければなりません。 先頭は言い出しっぺのA。 一応女子ってことでCと私が間に挟まり、しんがりはB。 Aが進行方向を照らし、Bが後ろから私たちの足元を照らす形で懐中電灯を持つことにしました。 中は肌寒くひんやりとした空気に身震いするほどで、波の音だけが微かに聞こえてきます。 壁や足元は濡れていて、天井からの落ちた水滴が顔にあたってはギャーギャーと騒ぎながら進みました。 半分ほどまで来た時、後ろのBが「うわっ」と叫んで転びました。 その声に驚いた私たちは「何!?やめてよ!」「ビビらすなよ!」と笑いつつも、心臓はバクバクしていました。 Bは立ち上がりながら今度は「あれ?」っと周りをキョロキョロし始めました。 濡れた足もとで滑ったのではなく、小石でも踏んだのかと「どうしたの?」と聞くと、濡れたズボンをパタパタ払いながら「今誰かとすれ違ったよな?」と言うのです。 もちろん誰ともすれ違ってなどいませんから、私たちは否定します。 すれ違うとなると肩が触れ合うほどの狭さなので、気が付か無いはずがないからです。 B「そんなはずねえよ!だって、肩がぶつかって俺こけたんだぜ?」 A「いや、誰ともすれ違ってないし。どんな奴とぶつかったんだよ。」 B「どんなって、俺下向いてて姿とか見えなかったから…急に足が見えてドンって…俺は誰とぶつかったんだよ…。」 Bは自信なさげにだんだんと声が小さくなっていきました。 私たちはBがふざけて驚かそうとしているものとへらへらしていましたが、そうではないらしい…。 先ほどより外気が冷えたように感じました。 私「ねえ、戻らない?」 基本的にビビりな私はもう戻りたくて仕方がなかったのです。 Bも気味が悪かったのでしょう、「もう帰ろうぜ」と及び腰になっていました。 C「えー、せっかくここまで来たんだから行こうよ。」 A「どうせBの気のせいだって。とりあえず行ってみようって。」 AとCは恐怖を楽しむように再び歩き出しました。 私とBは「どうする?」と顔を合わせましたが、「やっぱり戻るわ」とAたちに声を掛け、速足で入口へと向かいました。 あと少しで外に出れるという辺りまで来ると、鳥や虫の声が聞こえだし、夏の夜の生ぬるい空気に少しホッとしました。 すると後ろ…トンネルの奥から「キャーッ」や「ギャーッ」という叫び声と共にバタバタ走ってくる音が聞こえます。 何事かと振り向くとAとCが必死の形相で走ってきました。 私もBも「え?何?」と少しパニック状態でとりあえず車へ乗り込みました。 Cは途中で転んでしまっていましたが。それどころではないようで、素早く起き上がり再び猛ダッシュしてきました。 二人は我先にと車に飛び乗り、同時に「車出して!」と叫びました。 何が何だか分からないまま、運転手のBが車を発進させます。 私は助手席に乗っていたのですが、怖くてサイドミラーを見ることが出来ませんでした。 とりあえず明るいところへ行こうと、車を10分ほど走らせファミレスへ入り、お冷で一息つくとAとCが興奮気味に話し始めました。 B「で、何があったん?」 A「トンネルの出口付近までは何もなかったんだけどさ、あと少しってところで後ろから誰かが走ってくる音が聞こえたんだよ。」 C「Bがビビらせようとしてるんだと思った。」 A「また滑って転んでも知らねーぞとか思いながら振り向いたら、はっきりしないボヤッとした黒い人影が走って来ててさ…避ける間もなく俺らも柵も通り過ぎたというか通り抜けて、そいつ真っ直ぐ海に落ちて行ったんだ…けどさ…。」 そこまで話すと、Cはまたガタガタと震えだした。 A「落ちる寸前…俺らの方に顔を向けたんだよ…両目をカッと見開いてさ、口を大きく開けて…鬼みたいな顔して睨みつけてた…男で…こっちに手を伸ばして…。」 Aはコップの水を飲みほしてフーっと大きく深呼吸をした。 とりあえず何か食べて落ち着こう!とそれぞれ料理を注文し、話題を変えて、食べ終わる事には皆笑顔が戻り少し落ち着きを取り戻していた。 「今日合ったことは忘れよう!気のせいだよ!」と励まし(?)合い、いつものように軽口を叩きながらさて帰ろうと車へ向かい、絶句した。 私たちの車だけがぽたぽたと雫が垂れるほどぐっしょりと濡れいていたのだ。 店に入る前は濡れていなかったし、路面も他に駐車されてる車も乾いているのに…。 今でも観光地として客が訪れているが、もう二度とあのトンネルには近づかない…。

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