
長編
返して…
匿名 4日前
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、充血していました。
「いったい、何を探しているんですか」
「あたしの、足を……」
「足?」
反射的に僕は女の足もとに目をやりました。
すると、女の膝から下がぶっつりと千切れていて、その端はぐしゃぐしゃにつぶれ、皮膚のはがれた赤黒い筋肉の下からは、血にまみれた骨のようなものが覗いています。もちろん、コンクリートのたたきには大きな血溜まりができ、そうしているあいだにも、赤黒い染みがジワジワと、玄関の内側、僕の足もとのほうへ向けて広がっていたのです。
僕が悲鳴をあげると、女は急に、激しくドアを外側から引きました。
しかし、ガツンという音とともに、かけてあったチェーンが引っ掛かりました。
それに気付いた女は、隙間から手を差し入れ、チェーンを外そうとします。
僕は死に物狂いでドアを閉めようとしました。しかし女の手が、がっちりと挟まっていて、閉めることは出来ません。
女は両手をドアにかけながら、隙間に物凄い形相をした顔を押し付け、金切り声をあげて絶叫しはじめました。
「あたしの足を返して!あたしの足を返してぇぇ‼」
僕はなんとかしてドアにかかった女の指を引きはがそうとしましたが、女も恐ろしい力でドアをつかみ、離れようとはしません。
薄いドアが壊れてしまうのではないかというような必死の攻防の結果、僕はなんとか女の手を押しやり、無理やりにドアを閉めました。
それでもしばらくの間、女はドアを叩きながら叫び続けていました。
僕は恐怖のあまり、声が聞こえなくなったあとも、背中でしっかりとドアを押さえて立ちすくんでいました。
やがて夜が明け、新聞配達の物音が聞こえる頃になって、初めて、僕はチェーンをかけたまま、恐る恐るドアを開けて外を見ました。
すると、女が立っていたあたりのコンクリートには、べったりと赤黒い染みが残っていて、昨夜の出来事が夢でなかったことを、僕は改めて思い知らされたのです。
後日、近所の商店で聞いた話ですが、ちょうど僕が出張に出ているあいだに、僕の家の真正面の路上で交通事故があり、若い女がトラックの車体と電信柱のあいだに挟まれ、膝から下を切断されたのだということでした。
引きちぎられた脚はズタズタになり、それは無惨な状態だったそうです。彼女は運ばれた病院で亡くなったそうです。
あの出来事以来、僕は悪夢にうなされることが多くなり、しばらくして、その家を引っ越しました。
ここまでが彼の話です。
彼は引っ越したあとも、
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- 男の人何も盗ってないのに,,, 怖いですCanna☆
- ちょっと話を引っ張りすぎましたねホルモン8192
- ただそこに住んでただけなのに...ケビーニョ
- 男の人に返してーーーと言ってたけど男の人何も女の人から取ってないよ?天才小学生
- 返したげてぇなぁなの。