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中編

狂気に満ちた世界

しもやん 3日前
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 俺は無神論者で科学合理主義者である。  幽霊、呪い、神、宗教。この手の超自然的な概念はすべて、原始社会の名残にすぎないと確信している。  日本人は世界的に見ても特定の宗教を信仰していない人の割合が断トツに高い。家に仏壇がある家庭でも仏教を意識するのは葬式のときくらいだし、神社でお賽銭を放り投げているときでさえ、神道の八百万の神に思いをはせる人はまれだろう。  そうしたお国柄なので、われわれ日本人は世界で起きている宗教戦争やらテロやらの動機を理解するのにたいへんな骨を折る。というよりまったく理解できない人のほうが多いのではあるまいか。イスラム原理主義者による度重なるテロ、アイルランドのプロテスタントとカトリックの憎しみ合い、キリスト教ファンダメンタリストによる中絶クリニック爆破。正気の人間ならこんなまねをするはずがないではないか。  ジュリアン・ジェインズという心理学者が生涯でただ一冊だけものした途方もない大著がある(「神々の沈黙」というのがそれだ、興味のある向きはぜひご一読願いたい)。それによれば、人間の意識が誕生したのはわずか50世紀ほど前、すなわち紀元前3,000年あたりだったのではないか、という主張が臆面もなく開陳されている。  その根拠をこの場で記す余裕はないけれども、ジェインズはそれをあらゆる角度から検討して説得力のある仮説として提示している。そのころの人間は右脳から発せられる幻聴に支配されており、彼らはそれを「神の声」として認識、その指示に唯々諾々としたがっていたのだということだ。  仮にそれが正しいとしよう。するとさまざまな謎がたちどころに氷解する。統合失調症患者が悩まされる幻聴、新興宗教の教祖が啓示として受け取る天からの声、〈イリアス〉や〈旧約聖書〉に出てくる神に関する記述。ジェインズは主張する。「当時の古典に統合失調症的な人間の描写はいっさい見られない。なぜならすべての人間が統合失調症だったからだ」。  いま世界で起きているテロの犯行声明に注目してほしい。いわく「旧約聖書の何節にそのような記述がある」だとか、「偉大なるアラーの御言葉にしたがった」だとか、たいがいは紀元前に端を発する書物が原因になっている。すでに見たように当時の人間にはまともな自意識すらなく、ひたすら幻覚と幻聴に翻弄される木偶人形だった可能性がある。  もしそうであるならば、世界各地で発生している宗教がらみの争いが

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