
私の従兄弟が亡くなった高層マンションに、遺品整理のために訪れたのは、冬の寒い夜でした。彼は独身のまま三十代で、理由は不明ですが自ら命を絶ってしまいました。唯一の家族として、私は彼が住んでいた部屋を片付けることになったのです。部屋を探っていると、押し入れの奥から古いフィルムが見つかりました。思わず手が止まりました。なんとも言えない懐かしさが心をよぎり、フィルムプロジェクターを借りてきて再生することにしました。中身を確認するだけのつもりだったのですが、映し出された映像には衝撃を受けました。
映像には、派手な衣装に身を包んだ白髪の女性が映っていました。彼女は従兄弟の部屋の中で、私に向かって何かを訴えているように見えました。彼女の動きは滑らかで、何かを伝えようともどかしそうに見えました。
「また会えるよ」と、彼女の口から漏れた言葉が耳に残ります。瞬間、映像は途切れ、真っ暗な画面に変わってしまいました。それ以来、再生を試みても、フィルムは完全に壊れてしまったようで、何も映し出されませんでした。
整理を終え、従兄弟の友人たちと共に古いアルバムを見返していると、あの女性が若い頃の写真に収められているのを見つけました。彼女は、従兄弟が二十代の頃に交際していた女優志望の人でした。急に冷や汗が背筋を流れ、彼女の死因を考えざるを得ませんでした。果たして彼女も、自分と同じように自ら命を絶ってしまったのでしょうか?その思いが、私の心をざわつかせます。彼は何を知っていたのか、そして彼女は今、どこにいるのか。冬の夜、部屋にはただ静寂だけが残されました。何もわからないまま、私はその場を後にしました。
その後、時折、あの女性の笑顔が思い浮かぶことがあります。彼女は何を伝えたかったのか、未だに答えを見つけられずにいます。
彼女の言葉が、心に響くのです。
「また会えるよ」
その言葉が、私を静かに追い立てます。
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