
俺が、17才から20才まで毎日、ほぼいつでも身につけていた腕時計があった。
俺のじいちゃんの形見の時計で、いつも肌身離さず持っていた。
小さい頃じいちゃんにいろんなところに連れてってもらったことから、俺がこの時計を身につけて色んな場所に出かけることはじいちゃんへの恩返しでもあった。
高校生のときクラスメイトがこの時計をふざけて盗む真似をしたとき、周りに笑われ恥をかいてでも本気で取り返したこともある。
「この時計を誰かに壊されたとしたら一生恨むだろうな。」
みたいなことを人に話したこともある。相手がどう思うかも考えずに。
俺にとってこの腕時計は体の一部のようなものだった。
つらいことや大変なときもいつも身につけていた時計だった。
そんな腕時計だが、別れの日は突然やってきた。
20才のときのバイト中に、この腕時計をレジにぶつけて壊れてしまったのだ。
時間を調節するネジのようなものが吹っ飛んで、腕時計もぶつけた時間で止まっていた。
ネジはどんなに探しても見つからず、仮に見つかったとしても元に戻るか分からなかった。
その瞬間は取り返しのつかないことをしてしまったと焦る俺だったが、しばらくすると冷静な気持ちになってきた。
俺は、この腕時計に依存し続けていたのだ。
この腕時計に執着して、この腕時計は大事な時計なんだと意味もなく人にアピールしてきた。
腕時計が壊れると同時に、俺は3年間も執着し続けてきた腕時計から解放された気持ちになってきた。
俺は壊れた腕時計は自宅の机の中にしまい、その後は他の腕時計をすることもなく過ごしていた。
今思うと、腕にぴったりはまって長時間つけていると蒸れてしまうし、若い人には似合わない古い感じの腕時計をよくつけていたものだと思う。
また腕時計がどうかは別にしても、なぜ形見の時計というだけであんなに執着してしまったのか。
偶然の事故で時計が壊れてしまったのは、
「こんな時計にいつまでも執着するな。」
というじいちゃんからの戒めなのかもしれない。
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