本当にあった怖い話

怖い話の投稿サイト。自由に投稿やコメントができます。

長編

月の兎に会いに…

えい 2018年1月11日
怖い 722
怖くない 513
chat_bubble 11
26,055 views
今回は 怖い話ではありません。 ふと 思い出したので 投稿させて頂きます。 5年前の秋頃 ある親子と出逢いました。 日頃から お付き合いのある お寺からの相談で ある親子の事で 力を貸して頂けないかと 連絡を受けました。 丁度 手も空いていたので 「いいですよ。」と返事をし その日の午後 住職さんと一緒に 4歳の可愛らしい女の子( トモちゃん 仮名 )とお母様が いらっしゃっいました。 お母様と話をする間 トモちゃんはうちにいる スタッフと別室で遊んでて貰いました。 挨拶を交わした後 お母様が今回の相談事を話して下さいました。 トモちゃんが3歳の頃 高熱を出し 病院をアチコチ回ったものの 原因が全く判らず 薬も解熱剤を飲ませても 熱は下がらず 座薬を使っても 熱が下がらず 一週間ぐらい過ぎた頃 少しずつ熱が下がり出したので その時は ホッとして喜んだそうです。 それから まる1日掛けて熱は完全に下がり 平熱に戻ったそうです。 翌年に トモちゃんは 保育園に入園して 元気に毎日 通っていたそうなのですが… 初夏辺りになり 保育園の園長先生から 電話があり トモちゃんが他の子供たちとは 遊ばずに一人でいる事が目立つ様になり 一人でいるのに とても楽しそうにしていると言われたそうです。 お母様は 良く分からずにいましたが その日 トモちゃんを迎えに行って 買い物を済ませて家に帰った時 トモちゃんに聞いたそうです。 お友達とは遊ばないの?と……するとトモちゃんは ネコさんとおねぇちゃんと遊んでた方が楽しいから…と答えたそうですが その時は 園の外にいたネコと遊んでたのだろうと思っていたそうで 余り 気にも止めなかったそうです。 ただ おねぇちゃん というのが 少し引っ掛かったそうですが 自分の聞き間違いかと思っていたそうです。 トモちゃんには 園のお友達や先生とも 遊んでねと伝えてから トモちゃんは みんなと遊ぶようになり お母様は トモちゃんが言った事を忘れていきました。 日曜日 保育園が休みの日 トモちゃんはお母様と近所の公園に行きました。公園には 保育園が同じのお友達が居て 滑り台やブランコ等の遊具で遊んでいたのですが トモちゃんだけ ジャングルジムの裏の花壇の方でしゃがみ込んでいた様で お母様は トモちゃんの所に 歩いて行くとトモちゃんは まるで誰かと会話しているかの様に 楽しそうに笑っていたそうです。 トモちゃんに何してるの?と聞くと トモちゃんは不思議そうな顔をして 「ネコさんとおねぇちゃんがいた。」といい 何も無いのに まるで何かを抱き上げる仕草をしたそうです。 その時に お母様は 思い出しました。 以前 園長先生から言われた事を …。 同じ保育園に通う お母さん達に 変に思われる事を恐れて トモちゃんに帰ろうと言って まだ遊びたいと ごねるトモちゃんの手を引き 家に帰ったそうです。 それからも トモちゃんの妙な行動は 日に日に回数が多くなり 保育園にも通わせられなくなったのだと 困り果てていた頃 自分には見えないモノが トモちゃんには見えているんじゃないか?と思うようになり お寺や神社を結構 回ったらしいのですが 解決する事は無く その頃には 家の中に居ても 同じ行動をする様になり お母様はどうする事も出来ずに 隣町である 私達の住む町まで足を運んで来て 漸く キチンと対応して下さるお寺の住職さんに出逢えたのだという事でした。 ここから 会話中心になります。 私 「お話は分かりました。トモちゃんには 今の所 猫とお姉さんのみが見えているだけですか?他に何か違う人物や動物などの名前は出てきませんでしたか?」 お母様 (以後 母親)「いえっ確か……怖いオバさんと可哀想なお兄ちゃんがいるって言ってました。」 私 「トモちゃんが高熱を出した後 その様な事が起こったのですね?」 母親 「はいそうです。」 私 「他に何かありませんでしたか?」 母親 「………………。」 私 「隠さずに お話下さい。」 母親 「……つい最近なんですが…意味が分からない事をいい始めたんです。」 私 「はい。」 母親 「……月の………」 私 「月の?………ウサギさんですか?」 母親 「!! ……何故?」 私 「先程 トモちゃんの後を追いかける様に兎の姿が視えたもので…関係あるのかな?と」 母親 「そうです。月のウサギさんに会いに行くっ…て…あの子に何が起こってるんですか?あの子 どうなっちゃうんですか?」 私 「落ち着いて下さい。お母様が取り乱すと トモちゃんが不安になり視えるものが視えなくなってしまいます。お気持ちは分かりますが どうか 平静を保たれて下さい。」 母親 「……はい。すみません…」 私 「住職 暫く お母様を客間へ お茶を飲ませて差し上げて下さい。」 住職 「分かりました。さっお母様。トモちゃんの事は紫雲さんに任せて いきましょう。」 母親 「………はい。朋美を宜しくお願いします。」 ( さて どうしたものか……一時的なものなら 成長する事で消えるかも知れないけれど…何か引っ掛かる…それに…母親には言ってないだけで 相当なものが見えているはず。今更、あれは幻と言って見えない様にした所で……受け入れる事が出来るとは思えないし……兎に角 トモちゃんの話を聞いてみるか…。) 私は応接間を出て トモちゃんのいる部屋に向かいました。 朋美 「ネコさん、ウサギさんをいじめちゃダメだよ。仲良くしなくちゃダメ。」 障子戸から漏れ聞こえる トモちゃんの声は明るい。 私 「トモちゃん、入るね。」 朋美 「あ~っ ?!オバチャン来たからネコさんとウサギさん逃げちゃった。」 私 ( 苦笑 ) 朋美 「ママは?」 私 「ママは今 お坊さんとお話してるよ。」 朋美 「ふ~ん。」 私 「トモちゃん ワンちゃん好きかな?」 朋美 「うん。ワンちゃんも好きだよ。」 私 「そう じゃっそこに呼ぶね。」 朋美 「わ~~~いっ」 ( これでハッキリする。もしもトモちゃんが そうなら ジャック( *注)(犬の名前)が見えるはず。 ) 息を吐き出す様に微かな音を出す。 すると……… 朋美 「うっわぁ~おっきなワンちゃん !! おいでおいで !! 」 私 「やっぱり……」 *注 ( ジャックは犬では無く 狼です(汗)。 ) 私 「トモちゃん ネコさんやウサギさん お姉さんとお兄ちゃん それと怖いオバさんの他にもたくさん見えてるでしょ?」 朋美 「オバチャンにも見えるの ?! 」 私 「そう オバチャンにも見えるよ。」 朋美 「ママに言っても ママは見えないからいないって言うの。」 私 「朋美ちゃん ママやお友達に見えないものが見えてて 怖くない?」 朋美 「怖くないよ。オバチャンは怖いの?」 私 「怖くないって言ったら 嘘になるかなぁ 怖い思いもしたしね。」 朋美 「じゃあ トモちゃんが月のウサギさんに会いに行って オバチャンが怖くないようにしてって お願いしてあげるよ。」 私 「月のウサギさんに?会えるの?遠いよ?」 朋美 「分かんない。でも もうすぐ会えるの。」 私 「もう直ぐ?」 朋美 「ワンちゃん こっちこっち。うふふっくすぐったいよ~。」 それ以上は 話さなくなってしまったので 仕方無く 母親の待つ 客間へ行く事にした。 私 「トモちゃん オバチャン お母さんとお話して来るから ワンちゃんともう少し遊んでてくれるかな?」 朋美 「うん。いいよ。」 部屋を出て 客間へ歩いている時 丁度 通り掛かった 僧を呼び止め 本所に行って 高庵さんを連れてくる様に頼み 客間へ行きました。 私 「 お待たせ致しました。」 母親 「 あの………朋美は大丈夫なんでしょうか?やっぱり 何かとり憑いているのでしょうか?」 私 「やっぱり…とは?」 母親 「あっ……いぇ…何も無い空間とかに話し掛けていたり 笑ったりしてて それが 昼間だけじゃなく 夜中とかにもあって……私 …どうしたらいいんですか?」 私 「朋美さんには 普通の人が一生のうちに見るか見ないかのものが見えています。それを確認して来ました。」 母親 「じゃあ 見えなくする方法とか有りますよね?! 」 私 「方法は有ります。……ですが……」 母親 「……何か悪いことでもあるのですか?」 私 「悪い事ではありません。」 母親 「じゃあ 見えなくして下さい !! 」 私 「少し 気になる事があるので そちらを確認して貰おうと思いまして 今 本所に使いを出していますので もう暫くお待ち頂けませんか?それから朋美さんをどうするか 相談しましょう。」 母親 「気になる事?気になる事って何ですか?!これ以上何があるんですかっ?!何が起こっているんですか?!説明して下さい!!うっうう~……。」 私 「お母様 お母様がそうやって感情的になってしまう気持ちも分かりますが どうか気持ちを落ち着けて下さい。」 母親 「私の気持ちなんて 分からないわよ!!分からないくせに!分かった風な事言わないでよぉ?!」 その時 客間の戸が開いて 高僧のMさんが入って来て 一礼をして 私の隣に腰を下ろしました。 M 「そんなに大きな声を出してしまっては 娘さんが不安になるばかりですよ?」 母親 「………………」 私 「会われて来たのですか?」 M 「んん…ああ会ってきたよ。」 私 「どうですか?」 M 「イケないねぇ…。」 私 「やっぱり……ですか…。」 M 「お母さん 良く聞いて下さい。娘さんが見てるものは 既にこの世を去ったものです。普通の人には見えないものが 娘さんの目に映っている様です。それを私 どもは『霊感』と言っています。娘さんもその霊感を持ち合わせているようです。おそらく 高熱を出した時の事が原因だと思われます。」 私 「力には 強弱有りますが 朋美さんは おそらく 強に近い霊感を持っているのだと思います。それと……朋美さんには何か持病がありませんか?」 母親 「いえ…特になにも…ありません。」 M 「取り合えず 力を押さえる処置を致します。」 母親 「ああ。ああ。ありがとうございます!!」 そうして トモちゃんの 力を押さえる事で話が纏りました。 それから季節が巡り春の訪れを鳥の鳴き声で感じられた時 朋美さんのお母さんから 一本の電話がありました。 あれから 朋美さんは たまに空間や地面を見る事があったらしいのですが 口に出して 何がいるとかは 言わなくなった…と。 それでも 月のウサギさんに会いに行く という言葉は 相変わらず 嬉しそうに話していたそうです。 そして 今 肝臓の具合いが悪く入院しているのだと 疲れきった お母様が話してくれました。 お母様から連絡を受けた その夜。 嬉しそうにニコニコしながら トモちゃんはやって来ました。 私が 「具合はいいの?」と聞くと トモちゃんは黙って頷きました。 朋美 「あと少しで月のウサギさんに会えるんだぁ~」とスキップしながら バイバイと手を振って消えていきました。 時刻は 午前1時32分。 それから 20分後……トモちゃんのお母さんから連絡が入りました。 母親 「朋美が……先程……息を引き取り…ま…した。」と……。 死因は 多臓器不全だったそうです。享年 5歳。 月に行ってウサギに会えたかなぁ? ねぇ………トモちゃん。 ここまで お読み頂いて下さった方 ありがとうございました。

後日談:

  • トモちゃんの場合 高熱を出して霊感が強くなってしまいましたが それ以前から 自分の死期が分かっていた様に思いました。普通の子であれば突然 見え出したものに対して 怖がって当たり前なのに トモちゃんにはそれがありませんでした。なので もしかしたら 生まれ持ったものだったのでは無いか…と思います。

この怖い話はどうでしたか?

f X LINE

chat_bubble コメント(11件)

コメントはまだありません。

0/500

お客様の端末情報

IP:::ffff:172.30.0.105

端末:Mozilla/5.0 AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko; compatible; ClaudeBot/1.0; +claudebot@anthropic.com)

※ 不適切な投稿の抑止・対応のために記録される場合があります。

label 話題のタグ

search

数分で鳥肌が立つ恐怖録

読み込み中...

世界に引きずり込まれる怪異ノート

読み込み中...

迷い込む長編異界録

読み込み中...
chat_bubble 11