
長編
そこに、いる
匿名 2024年4月28日
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り出した。
「そこに、いる……」
「え? ……何が?」
そう言って俺の指先を辿った輝は、小さく首を捻るとその視線を俺へと戻した。
「いるって、何が?」
「……っ! いるだろ! 血だらけの女がっ!」
「……いや、そんな人いないよ」
青へと切り替わった信号で人の波に押し出されると、血だらけの女性を見失った俺は半狂乱になって叫んだ。
「嘘つくなよっ! あそこにいただろっ!?」
「ちょっ……、慶太どうしたんだよ!?」
輝の手を振り解くと、血眼になってあの女性の姿を探す。けれど、一度見失った女性の姿を見つけ出すことはできない。
「きっと疲れてるんだよ。今日はもう、帰って休めよ」
そう言った輝に見送られて自宅へと帰ってきた俺は、その日は日課であった再生回数の確認をすることもなく眠りについたのだった。
──────
────
その日もやはり、俺は例によってあのトンネルの前へと来ていた。
確かに俺へと近付いて来ている女性の姿に、夢の中の俺は恐怖に震え上がった。今すぐこの場から逃げ出したいのに、地面に張り付いた足は一歩も動かすことができない。
「──!?」
微かに聞こえてきたその音に目を凝らして見てみると、距離が近付いたことで見えてきた、血だらけの女性の口元が動いている姿。
あれは、あの女性の声なのだ──。
そう理解した瞬間に夢から覚めた俺は、ガタガタと震える身体を抱えてベッドの上で丸まった。
「いやだ……。いやだ……っ」
何を言っているのかまでは理解できなかったが、分かりたくもない。俺は本能的にそう思った。
その日を境に、夢と現実のどちらにも現れるようになった女性。悪夢に魘《うな》されて目覚めると、必ず現実の世界にも姿を現す。しかも、現実の世界でも段々と俺に近付いて来ているのだ。
それに気付いた時は、ただただ恐怖した。
(このまま俺の目の前まで来てしまったら……その時、俺は一体どうなるんだ……っ?)
そんな不安に駆られた俺は、ここ2日ほどひたすら睡魔と闘っていた。
あの夢さえ見なければ、現実の世界に女性が姿を表すこともない。とはいえ、睡魔に抗うのは中々難しい。
「── !」
危うく閉じかけた瞼を懸命にこじ開けると、眠気覚ましでもしようと久しぶりにパソコンを開いてみる。あれほど気にしていた再生回数も、ここ5日
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- 私も好きで心霊スポット巡りの動画をよく見ますが…怖いなうみゅ