
長編
お店で働いていたときの話
*ゆん* 2015年8月31日
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私が、以前勤めていた会社でのことです。
新規飲食店のオープニングの店長に任命されました。
その店は、大きな施設のなかにある店で、この施設の敷地の中央にある、建物の1階の一角を改装した店舗でした。
営業時間は施設にあわせて9時から19時です。
店舗の入った建物は、1階はホールのようになっていて、2階までは吹き抜けになっています。
真ん中に2階に上がる階段があり、確か、5階ぐらいの建物だったと思います。
そして、どこからも入れるように、4方に入口がある建物でしたが、店舗を入れるため、1箇所の入口をふさぎ、そこに店が入りました。
店舗はフードコートの中の店舗のようにホールに向かって作られました。
そして、店の前に飲食スペースが作られており、ホールとの飲食スペースの間はガラスで仕切られ、入口には鍵のかかる扉がつけられています。
ここは営業時間しか開けません。
オープニング準備は、他店を借りてする事がほとんどで、何事もなく準備は進み、無事オープンしました。
オープンから盛況で、とても忙しい店舗でした。
2ヵ月ぐらいして一緒にやっているバイトも慣れてきた頃です。
昼ピークの準備も終わり、あとはいつものようにお客様を待つだけになり、バイトと何でもない話で盛り上がってました。
すると、注文カウンターから
「すいません。」
若い女性の小さい声が聞こえました。
一斉に全員カウンターに目をやり、
「いらっしゃいませ!」
「...あれ?!?」
その時カウンター側に2名、厨房1名、中継役の私で合わせて4名。
一斉に同じ空気になります。
だってカウンターに誰もいません。
カウンター側のバイトが
「ウソだろ...」
とカウンターまわりと外側の見いないところに子供でもいるのかと見て回ります。
誰もいません。
私は、
「気のせいだよ!さあ、ピーク始まるよ!!」
と伝えいつものように仕事を始めました。
全員で聞いているのに気のせいであるわけありません。多分みんなわかっていますが、考えるのをやめました。
数日後、今度はお昼のピークタイム中でした。
カウンターにバイト2名、厨房に1名、揚げ物担当1名。中継役に私の5名。
忙しい中では、私は指示をしながら全体を手伝います。
すると厨房側の壁際におかっぱの150センチぐらいの女性が、私の視野に見きれるギリギリのところで、目に入りました。
飲食のお昼は忙しくて余裕がありません。まさに戦場です。
私は、
その子に顔を向けながら、
「何ボーッとつったってるんだ...?!」
そしたらそこには誰もいません。
それに、そんな子は店にいません。雇った記憶もありません。
バイトから
「店長遊んでないで!!こっち回らない!!」
私はヘルプに入りながら、
この前の声とこれは関係があるのか...
そんなことを考えていました。
それから毎日ではないですが、お昼の忙しいときに限って、
・勝手に厨房の冷蔵庫が開く
・皆が見える場所のショーケースが勝手に開く
・裏口に鍵がかかっているのに開け閉めされる
みんな不思議だとは思うけど、
「ちゃんと閉めないから(笑)」
「絶対なんかいるよー(笑)」
とか、笑い話にしてました。
私もまさかと思って笑ってました。
それから半年程経って、決算に向けて私は店に残って仕事をしていました。
在庫を数えたりしてたので、確か21時頃になってしまいました。
これぐらいの時間になると、施設の営業は終わってるので、施設関係者は入口の警備以外、ほぼ全員帰っているはずです。
当然、店の入っている建物も消灯されており、店以外は真っ暗です。
私はいつも閉店後の片付けで他の人よりは遅く帰るので、常に懐中電灯を持っていました。
その日、私は店の事務所で帳簿をつけていました。
すると、店舗の方から、大人数が入ってきて、何やら話しているのが聞こえます。
私は、
「あれ?ホール側の鍵閉め忘れたのかな?こんな忙しいときに面倒だな。とにかく帰ってもらわないと...。」
と事務所をでて店に向かいます。すると...
おかしい...。真っ暗で誰もいません......。
誰もいないのに何かざわざわとしてる...。
仕事で残っていた事を後悔し、その瞬間、冷や汗がぶわっとでて、気持ち悪くなります。
...まずい!
音からしてかなりの人数のはず!
多分逃げなきゃいけないやつだ!!
事務所に走って戻り、持てるもの持って、懐中電灯を振り回しながら、とにかく全力で走って逃げ帰りました。
次の日、明るくなって、店に行くと何事もなかったように普通です。
それからすぐのこと。
バイトが友達から聞いた話をしてくれました。
以前からこの建物では、ふらっと通り抜ける幽霊が出るらしいって噂があり、うちの店でふさがってしまった出口から出ていくとのことだった。
そして、この出口と少し離れた広場には、昔、お墓があったらしく、出口と広場までの間でも、大変多くの幽霊目撃情報があると言うことだった。
そんなところで働いて大丈夫?
...という話だった。
そのお墓はどうしたのかというと、この施設が立つということなので、近くに移転されたとのことだった。
それを聞いてから私は、元の出口付近を片付け、物を置かないようにした。
天気のいい日は店舗の作り上、人は通り抜けはできないにしても、扉はそのままあったので開けるようにした。
すると不思議なことに、この日から何も起こることはなくなった。
でもまだ怖くて夜遅くまでは仕事をやる気にはならず、遅くなるときは近くの店に行ってやらせてもらっていた。
お恥ずかしい話、残るときにはアルバイトに
「帰り送ってやるよ」
といって待っててもらうこともしました。
このあと、私はすぐに異動が決まりました。でも、この扉をあけるという引き継ぎはしませんでした。信じてもらえるかわかりませんし、変なやつだと思われたくもないので。
あの頃のバイトたちは、小さな事を笑い話にしていましたが、私が経験した夜のことは話してません。辞められても困るので。
結局、私は会社をやめてしまったので、今はもうどうなっているのかわかりません。
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