
中編
夜のテトラポット
ザザエ 2日前
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多趣味な友人の話。
ある時期に彼は急に釣りにハマりだし、高額な道具を揃えて昼夜を問わず海や川で釣りを楽しんでいた。
ある晩彼から電話があった。もう夜中の12時を回っていたか。
さっきまで夜釣りをしていたようなのだが、彼は電話口で「すごいもの見つけた!見せてやるから明日の朝家に行くぜ!」と興奮気味に言った。
午前7時前、大きなクーラーボックスを引きずって彼が家に来た。そしてニコニコしながら中を見せくれた。真夜中に電話をかけてくるほどの「すごいもの」とはどれほどの獲物かと覗き込んで驚いた。
中には30センチ以上はある赤黒い伊勢海老がぎっしり詰まっていた。買ったら数万はしそうな立派な伊勢海老だ。「これどうしたん?どこで釣ったん?」と聞くと彼は答えた。
「伊勢海老って沖の深いところにいるイメージだろ?それが、昨日近くの漁港のテトラポットの上で釣りしてたんだけど、テトラポットの下にルアー落としたからライトで下照らして覗き込んだのよ。そしたら、手が届きそうな浅い所にこいつらが山ほど隠れてたのよ!伊勢海老の釣りかたなんてわかんなかったけど、コンビニでスルメ買ってきて針につけて垂らしたらこんなにポンポン釣れたんだよ!」
彼は嬉々として「今夜一緒に行こう」と誘ってきた。いやいや、これは明らかに密猟だ。
行かないと断ると「お前は真面目だなぁ。じゃあお前の分も俺が今夜取ってくるよ!」とヘラヘラ笑って帰って行った。
その夜、また彼から電話があり「すごいもの見つけた。明日の朝話すよ。」と言われた。もう夜中の12時を回っていたか。心なしか疲れたような元気のない様子だった。
朝7時前、今度は何も持たずに彼が家に来た。何が起こったのか、彼が話してくれた事を要約するとこんな感じ。
昨晩も伊勢海老捕まえようとしたが、俺に密猟だと言われたもんだから、人目を気にしてライト消してテトラポットの中に潜り込んで糸を垂らしていた。
真っ暗で波の音しか聞こえなかったが、しばらくして耳が慣れてきたら、波の音に混じってなんか変な音がする事に気付いた。
テトラポットの壁面に違和感を感じてよくよく目をこらして回りの壁見てみたら、真っ暗な中で何か動いてる。何かが動くというか、壁自体が動いているように感じる。
恐る恐る周りをライトで照らしてみたら、彼の周り360度全面に灰色のフナムシがびっしり張り付いてミシミシ動いてたそうな。
虫が苦手な友人は思わず声をあげそうになったが、
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