
長編
申告外貨物
しもやん 3日前
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ドライバーは片言の日本語を話す真っ黒に日焼けした外国人で、処分に困っているテレビやパソコンを格安で処分してくれるという。電気店に持っていくと1万円近くはとられるテレビをタダ同然で引き取るという。いったい彼らはそんなものをどうするつもりなのか? 自分で使うにしてもそう何台も必要だとは思えない。
ほかにもある。とても日本人が書いたとは思えないみみずの這いずったような筆跡で、二束三文の荒れ地に次のような看板が突き刺さっていたりする。「なんでも引き取ります、自由に置いていってください」。いったいこの土地の持ち主はどんな人物なのだろうか。ごみを無差別に引き取ってくれる現人神だろうか?
察しのよい読者はお気づきだろうが、おそらくこうした方法で回収された中古品が、回り回ってわたしたち通関業者の目の前に書類として顕現しているのだろう。USED FUTON, USED SHOES, USED TOYS, USED BAGS――。ともかくそうした商売をパキスタン人、インド人、スリランカ人あたりが母国の需要を見越して手広くやっている。そのように理解していただきたい。
* * *
見積もりを出した翌日、即座に折り返し電話がかかってきた。要領を得ない片言の日本語で先方はしきりになにやらくり返している。何度かヒアリングしてようやく理解できた。「いつコンテナくるか?」と言っているのだった。
アジア人の商習慣は日本のそれとはまったく異なる。ふつうお互い新規の取引なら途中でトラブルが起こらないよう、綿密に段取りを決めるものだが、彼らにはのんびり構えているような時間はない。前回の取引で発生した仕入れの支払い期限がすぐそこまで迫っており、それにあてるため間髪入れずに新しい輸出をこなさねばならないのだ。トラブルが起こればその都度通関業者に泣きついて解決させる。そういうものだ。
らちが明かないので不慣れな英語に切り替えてみたが、先方は英語もよく知らないらしく日本語以上に片言になる始末だった。結局一字一句明瞭に発音することでこちらの意思はどうにか伝わり、先方のリクエストもかろうじて理解できた。依頼内容は次の通りである。
業務形態 輸出
商材 中古衣類、その他
積み出し地 名古屋
向け地 カラチ(パキスタン)
ボリューム 40フィートコンテナ×2
バンニング場所 岐阜県某所
船腹予約は荷主が自分で手
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- このお話は結構良かったです。しゆか