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長編

夜の白出沢遡行

しもやん 2日前
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 俺は登山をする。歩くときは10時間くらい山中にこもってたりもする。  俺の場合、登山は単なる趣味であって、ライフワークなんかではぜんぜんない。山が好きというわけでもないし、温泉の薬味程度に考えているというのが本当のところだ。  それでも命は惜しいので、それなりに勉強したり体力づくりをしたりはしている。山に入る前から計画を立て、何時までに下山するというおおまかな予測も立てる。とはいえそうした優等生的準備が億劫になるときもある。  1年前の夏、恒例の穂高参りに出かけた。山屋のなかには北アルプス絶対主義者というのがいて、穂高とか槍以外は山にあらず、なんてことを言いだす輩もいる。俺はそこまでひどくはないものの、やっぱり穂高岳は好きだ。その夏も奥穂岳(3,190メートル)目指して新穂高温泉から入山した。  俺はもう、奥穂には何度も登っているし、岐阜県側からのアプローチも通ったことがある。そうなるといきおい計画もなおざりになって、しまいにはナイトハイク前提になってしまい、出発は14:30という、考えられないほどずさんな山行となった。  長い林道を歩き通し、白出沢出合に着いたのが16:30。ふつうの山屋はとっくに山小屋なりテン泊なりしている時間帯だが、俺はこれから標高差2,000メートルをやっつけるのである。自信はあった。まったく愚かだった。  沢を詰めはじめてすぐ、天候が崩れ出す。途端に猛烈な土砂降りに見舞われた。慌ててレインコードを取り出してかぶる。最初はどうということもなかったのだが、夏とはいっても北アルプス、2,000メートル以上ともなれば気温は涼しいを通り越して寒いくらいだ。それに加えて雨。ぐんぐん体温が奪われていくのがわかった。  18:00ごろ荷継沢を横断、ここからは足元の悪いガレ場が一直線に、標高3,000メートル付近の白出のコルまで続いている。この登りは前回通ったときもかなり手こずった記憶がある。とはいえここを登り切らないと山小屋はないし、途中にテントを張れるようなスペースはまったくない。一度登り出したが最後、やり切るしかない。  登りは困難を極めた。雨のせいで体温が奪われ、日没により道がまったくわからない。さらに悪いことに濃い霧が出てきて、あたりは白亜の迷宮と化した。ヘッドランプの光輪は霧で乱反射して使いものにならず、1メートル先も満足にわからないようなありさまだった。  何度もルートをロ

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