本当にあった怖い話

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長編

お礼をしたいので

しもやん 3日前
怖い 646
怖くない 660
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女がなにをしにこんなところへこんな格好でやってきたのか察しがついていた。 「お姉さん、いくつ」 「21です」  わたしはこのとき34だった。冗談ではない。 「まだ早いよ。帰ろう」  無理やり寝間着を被らせた。靴を脱ぎ、靴下も脱いでこれも無理やり履かせた。わたしはミュールで十分だった。まだなお震えているので、ストーヴを取り出してコーヒーを沸かし、蜂蜜をくどくなるくらい垂らした。女子大生はなかなか受け取らなかったけれど、根負けしたのか息を吹きかけて冷ましながら飲み干した。  わたしたちは吹雪のなか、黙々と木和田尾を下った。彼女を先頭に立たせ、後ろから道を指示してやる。危なっかしい足取りだったけれど、振り返って登っていこうとはしなかった。下部の沢道になったあたりに達するころには慣れたもので、木に掴まりながら体勢を安定させて降りる技術をひとりでに習得するくらいになっていた。  19:00すぎ、ようやく林道終点の駐車場に着いた。  聞けばここまで最寄駅から歩いてきたのだという。少なくとも10キロメートルは先だった。わたしは彼女を助手席へ押し込むと、ヒーターを最大にし、なんとか住所を聞き出した。名古屋市だった。登山後の楽しみである温泉は諦めるしかなかった。  別れ際、ずっと黙っていた彼女のほうから連絡先を交換したいと言い出した。  正直なところ断りたかったけれど、乗りかかった船という言葉もある。いつでも連絡してきなさいと先輩風を吹かせたのを覚えている。個人の自殺ホットラインになるというのはゾッとしない。でも人助けをしたという心地よい疲労感はあった。  翌日にでも鬼のように連絡があるものと覚悟していたけれど、予想に反して彼女からの連絡はいっさいなかった。未遂の理由がなんだったのか結局知らずじまいだったが、大した理由ではなかったのだろう。夜間ハイクを懲りずにやったときにたまに思い出す程度で、それっきりすっかり忘れていた。      *     *     *  わたしはどうすべきなのだろう。  2年も前のことなのだから、会うのを断ったところで彼女がまたもや雪山へ突貫するとは思えない。でもなんとなく、要望に応えるのは義務のような気がしている。  それにしてもおかしいのは、会合の場所である。あのとき下山した木和田尾の登山口で合いたいのだという。3月になってようやく暖かくなってきたけれど、まだ鈴鹿山脈は雪に閉ざされてい

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  • ホラーな曲を流しながら聞くとめっちゃ怖そうな話でした!
    わかあゆ
  • どゆこと?
    ゆいちん
  • うわぁ
    こたくん
  • こたくんへ 無理なことを言ってはいけません
  • 結果、載せてね。
    こたくん
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