私は30代前半の男です。 10年くらい前に職場の上司のMさんと仕事の後に飲みに行くことになりました。Mさんはお酒とカラオケが大好きで居酒屋の後に行きつけのスナックに連れて行ってもらいました。 私はそのとき20代前半、Mさんは50代前半と親子くらい歳が離れていましたが仲良く飲んでいました。 私はお酒を飲むとトイレが近くなるのでスナックでも自分の歌を歌い終わるとMさんに断ってトイレに行きました。 座っていた席のすぐ横がトイレだったこともあり、誰も入っていないことがわかっていたのでノックもせずにトイレのドアを開けました。 すると誰も入っていないトイレのはずが先客がいました。正確にはいた気がした、というほうが正しいです。一瞬よりも短い隙に先客はいなくなってしまいました。 私は、あー酔ってるなぁと思い小のほうの用をたし席に戻りました。 またMさんと馬鹿話をし、カラオケを歌い、お酒を飲んでいるとすぐに尿意を感じトイレに立ちました。自分が出てからすぐ横のトイレに誰も入っていないのでドアを開けるとまた、先客が、消えました。 はっきりと姿形を認識できるわけでもなくほんの一瞬、いると思ってしまうのです。 酒は得意ではないので普段は飲むと頭痛がしてそれ以上飲めなくなるのですがその日は調子が良く頭痛もせず楽しく飲んでいたので、酔っ払うって不思議な感覚だなぁと酔いのせいだと思っていました。 また用をたし席に戻り酒を飲みました。今度はずっとトイレに注意しながら酒を飲んでいるとすぐに尿意を感じ3度目のトイレへ。念のためノックをします。当たり前ですが、誰も入っていないのを確認していた私は返事がないこともわかっており、ドアを開けました。 いました。ヤバイ、幽霊を見てしまった！！すごい！！（見たと言っても一瞬すぎて見たうちにはいっていないし、正直酒のせいだと思っている）恐怖3割、感動7割といった感じで3度目の用をたし席に戻りました。 席に戻り店員のママさんにトイレの話をし、3回目のたった今も見たと話ました。 私は笑い話のつもりがママの顔からは笑顔が消え少し寂しそうな表情をしたのが印象的でした。ママはすぐに他の席で常連さんと話をしていたマスターを呼びました。Mさんとマスターは久しぶりなど世間話をしていたらママさんがこの子あの人を見たって、と伝えました。マスターも少し寂しそうな表情でしたがすぐにどこで見た？どんな格好だった？と聞いてきました。 私は一瞬だったので格好はわからないがトイレの中で見ました、と言いました。マスターは、そうか、と言うとその幽霊について話してくれました。 どうやら常連だったらしく、亡くなった後からスナックで目撃されるようになり、マスターも最初は死んでもうちに飲みにきてくれたかと嬉しかったそうです。ですがやはり幽霊、亡くなっている以上成仏しなくてはダメだと思いよく目撃される電話が置いてあるスペースへ盛り塩をし、叱ったそうです。それ以来目撃されなくなったそうです。ですが、その電話があるスペースは私の座っているすぐ後ろでした。私は段々と怖くなってきましたがマスター、Mさん、ママと楽しく話しお酒を飲んでいるうちに恐怖も薄れ、すっかり幽霊のことなど忘れた頃にまた、尿意に襲われました。上機嫌でトイレに向かいドアノブに手をかけ回した瞬間、思い出しました。このドアの向こうには奴がいるということを。 ですが体を止めることも出来ずにトイレを開けてしまった私は固まりました。先程は一瞬で消えたあいつが今度は少しだけ長く、残りゆっくりと消えました。声に出せるほど長くはない時間がスローモーションのようにゆっくりと流れ、あいつの存在を十二分に確信させました。怖くなりすぐにドアを閉め、席に戻りました。酔いは一気に冷め、Mさんと一緒に歌うはずの曲が流れても私は恐怖で身動き出来ずにいました。マスターもママもすぐに私の異変に気付き心配してくれました。Mさんはご機嫌でコプクロの蕾を歌ってしました。この酔っ払いめ。私はマスターとママにまた出たので怖いから帰ると伝えMさんには気持ち悪くなったので帰ると伝え家に帰りました。 スナックから家まで徒歩で15分ほどでしたが日付を跨いだ夜道は、そこそこ大きな都市のためそれなりに明るく恐怖は感じませんでした。 タバコを吸いながら先程の事を考えていました。3回目までは良かったんです。4回目、最後にトイレを開けた時、あいつはそれまで向こうを向いてトイレの真ん中くらいにいたのに、最後の時はドアのすぐ側に立ち、こちらを向いていました。 目が合ったはずです。 よく幽霊は自分の存在を認めてほしい、気付いてほしい、というような事をネットで見ていた私はあいつが私が気付いたことに気付き、トイレの中でこちらを見て待ち構えていたんだと思いました。 家に帰るとあれは飲み過ぎて見た幻覚と思い込み洗面所に行き顔を洗いました。 顔を上げると、鏡に映ったわたしの背後に一瞬あいつがいました。 私は、あまりにもベタな展開におかしくなってしまい、恐怖はなくなりそのまま風呂に入り就寝しました。 それからというもの幽霊が良く見えるようになり、ということもなくいつも通りの生活を送っていました。 幽霊を見たかもしれないという夜の事を忘れたある夜、リビングでテレビを見ていたときです。風呂から、ドンッ！と音が聞こえました。急いで行ってみるとあれだけ大きな音がしたのにも関わらず何も落ちていないのです。また数日後、ドンッ！と音がしました。シャワーが床に落ちる音でした。すぐに風呂に行くと当たり前のようにシャワーはしっかりとシャワー掛けに掛けられてしました。それからほぼ毎日シャワーが床に落ちる音、プラスチック製の桶が床に落ちる音がしました。段々私も確認に行かなくなり、生活音の一部となってしまいました。1日1回以上音がすることはなかったので気にも止めずにいました。 そんなある日家でお酒を飲んでいるとまたドンッ！と音がしました。あー今日はまだだったなと思いまた飲んでいると今度は桶が床に落ちる音がしました。今日はどっちもかぁと思っていると今度は洗面所のドアを叩くような音に変わりました。 ここでお酒の力が発動してしまいました。 私は洗面所に行き幽霊に対して説教をしてしまいました。寂しいかなんなのか知らないがあまりにしつこいといった旨を大声で怒鳴り、すでに死んでる幽霊に対して殺すぞ！と脅しました。 その後就寝し朝起きると昨夜の自分の行動が恥ずかしくなりました。笑 それ以来シャワーが落ちる音や桶が落ちる音がしなくなったので助かっています。ネットの怖い話の霊感がある人達は幽霊を相手にしてはいけない、反応してはいけないというのをよく見ますが幽霊が力が弱かったのかなんなのかわかりませんが私の場合は解決してくれて助かりました。 10年近く前のことなんですが人生で唯一の心霊体験だったので鮮明に覚えていました。そのマンションからは引っ越しましたがマンションは2019年5月現在もまだ八人の王子の街の浅い川の側のペット可のマンションとして残っています。スナックのほうはマスターが亡くなったという噂を聞きました。10年前で70近くだったと思うので。建物はそのままで看板が外されていました。どなたかそのスナックに行ったことがある方がいて、私と同じようなことがあった方がいるかもしれないですね。皆さんは幽霊に気付いても知らないふりをしましょう。憑いてこられると面倒なので。