
中編
さまようパーティ
しもやん 3日前
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俺は登山をする。歩くときは10時間くらい山中にこもってたりもする。
怠惰な性格なので、世間で推奨されてるような早朝発、昼過ぎ下山なんていうお上品なスタイルじゃなく、昼前出発、夜中下山がデフォルトだ。
陽が落ちてから果たして山のなかをうろつけるのかという疑問はあるだろうが、まあやってやれないわけじゃない。その山域に詳しいのと、真っ暗闇のなかヘッドランプの灯りひとつで歩ききる強固な精神が求められはするが。
あれは3年くらい前の11月ごろだったと思う。近所にある鈴鹿山脈に俺は登ることにした。この時期はヤマヒルもいないし、紅葉も見ごろだし、暑さも和らいで低山でも快適に歩けるシーズンだ。ルートは確か、朝明渓谷から谷を詰めて中峠を越して神崎川に降り、オゾ谷を経由してイブネを満喫、さらに杉峠から大峠にいたり、雨乞岳をハントしてコクイ谷に降り、根の平峠で下山するという気ちがいじみたルートだった。
例によって遅出が祟ったのと雨乞岳の登りが予想外に難航したことで、コクイ谷への下りに差しかかった時点で日没してしまった。杉峠から朝明渓谷までは地図上のコースタイムで4時間近くある。このままだと帰りが20時すぎになってしまい、温泉に間に合わなくなる。俺は焦っていた。疲れた身体に鞭打って、陽の落ちた山中をヘッドランプを頼りに下っていった。
俺はナイトハイクには慣れている。いままで何度もやってきたし、いくらか修羅場も潜ってきている。吹雪の藤原岳で4時間以上も日没の山中をさまよっていたこともある。いま歩いているのは何度も通った沢道で、絶対の自信があった。
ところがどうも勝手が悪い。沢道というのは文字通り、横手に沢を見ながらつけられた道で、沢の渡渉があるとそれを見落としやすいわけだ。何度もルートをロストして暗闇のなかを右往左往する破目に陥った。当時はGPSを持っていなかったし、携帯は当然圏外のエリア。迷ったら最後、当日下山は絶望的だった。
御池鉱山跡地のあたりだったろうか。神経をすり減らしながら必死になって登山道からはずれないよう歩いていると、沢から離れた北側、登山道なんかまったくない急な斜面にパーティがいる。ヘッドランプの環が何重にもなってゆらめいている。俺は自分の目を疑った。ナイトハイクをしていて他人に遭遇するのは本当にまれだ。まともな神経の持ち主ならそんなまねはしない。たまにいるにはいるけれども、整備され尽くした日本
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- 山での不思議な体験見ててとても面白い!もも