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30番の秘密
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30番の秘密

8時間前
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彼女は、いつも体育館の一番端の楽器の前にいた。

その楽器は“クラリネット”。

しかし、クラスは29人。名簿にもその楽器の持ち主はいない。

担任も生徒たちも、その楽器の存在に触れることはなかった。

それでも、毎日の授業では、クラリネットだけが異様に目立っていた。

「誰かの忘れ物かもね。」

そう笑う先生の声は、どこか不自然に震えていた。

でも、私たちは“知っていた”。

その楽器の前には、確かに“誰か”がいた。

誰も話しかけることはなく、名前も呼ばれたことがない。

しかし、楽器の周囲だけ、冷たい風が吹き、床は常に濡れていた。

音楽室では、クラリネットが独りでに音を奏でることがあった。

黒板には「リナ」と爪で書いたような跡が残っていた。

ある日、クラスの中心的な男子が、その楽器の前にふざけて座った。

「リナさん、おはよう!」

そう言った次の瞬間、彼の椅子が音もなく倒れた。

それから、異変が始まった。

彼の楽譜が消え、見つかったときには、びしょ濡れで破れていた。

ノートには「返して」「返して」と繰り返し書かれていた。

ある日、彼はぽつりと呟いた。

「誰もいないのに……毎日、背後から見られてる気がするんだ。」

そして突然、学校に来なくなった。

その翌日から、楽器の前に楽譜が置かれるようになった。

机の上には、ぐちゃぐちゃに濡れた彼の楽譜が。まるで、戻ってきたように。

次に消えたのは、誰かを笑っていた女子だった。

声が出なくなり、医者でも理由は分からないと言った。

ある生徒は、ある日突然、鏡の前で自分の顔を殴り続けた。

止めに入った先生の前で叫んだ。

「リナが……笑ってたの!!」

最後の学期末。

名簿に、新しい名前が赤いインクで書き加えられていた。

30番 白井リナ

担任はその名前を呼ばない。

でも、机の中には古い型の楽譜があった。今では使われていない、昭和のもの。

その楽譜には、爪で引っ掻いたような血の跡がついていた。

卒業式の日、私たちは集合写真を撮った。

写真を見たとき、誰もが息を呑んだ。

30番の楽器の前には、誰かが立っていたのだ。

顔は見えない。ただ、口元だけが、裂けるように笑っていた。

何人かが写真を焼こうとした。

だが、真ん中に焼け残ったのは、あの“笑顔”だった。

焼けば焼くほど、笑いが深く、濃く、広がっていった。

いじめは、誰かが“消える”ことで終わるものではない。

それは、場所に残る。空気に染みつく。

“記憶”という名のままならぬ亡霊として。

だから、気をつけてほしい。

あなたのクラスの出席番号──

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はじめまして、よろしくお願いします。

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