
中編
幹夫くんとウヌキロさん
匿名 3日前
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んやりとした輪郭だったが、人間の子供に近い形をしていた。
私はすぐに踵を返しその場から逃げた。
怖くてたまらなかった。
以来、今に至るまで私はその雑木林には近づいていない。
先日、人づてに幹夫くんが亡くなったことを聞いた。
幹夫くんが隣町に引っ越して以来、ついに彼とは会わず仕舞いだった。
年賀状のやり取りはしていたが、それも最初の数年だった。
私自身も大学に進学したのを期に、地元を離れている。
疎遠になったのはそうした物理的距離の理由もあったが、やはりウヌキロさんのことが一番の理由だったと思う。
彼が学校に来なくなったのは、単に家庭環境によるものだったかも知れない。
そう思いながらも、やはり私にはウヌキロさんが関係しているような気がして仕方なかった。
葬儀はすでに遺族のみで執り行われたらしいが、せめてお線香くらいはあげたいと思い、かつて彼から届いた年賀状に記された住所を訪ねた。
日が傾きかけた閑静な住宅街を、スマートフォンの地図を頼りに歩く。
私は彼に対して罪悪感を感じていた。
ただ、それが具体的に何なのかは説明がつかないし、私が何かすることでこの状況が回避できたとは思えなかった。
地図の示す目的地が間近になった。
最後の角を曲がった瞬間、信じられないものを見た。
道の真ん中に立つ黒い影が、私を見ていた。
「ウヌキロさんだ!?」
すぐに私は思った。
それは真っ黒で人のような形をしている。
背は2m以上あり、腕や首が普通の人間より長い。
一瞬が果てしなく長く感じた。
私は恐怖ですくむ身体を叩き起こし、全力でその場から逃げた。
やはり幹夫くんはウヌキロさんに殺されたのだ。
駅まで走り切り、そのまま崩れるようにして泣いてしまった。
幹夫くんを想ってではない。
ただ怖かった。
ウヌキロさんの身体は真っ黒だったが、私を見つめるその顔だけが違った。
小学生だった時を思い出させる。
面影があった。
八の字眉のあの笑顔が、真っ直ぐ私を見つめていた。
きっと私は二度とその街に近付くことはない。
幹夫くんには本当に申し訳ないと思う。
でも怖くてどうしようもないんだ。
あいつは私を待っている。
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- コナンの犯人の先駆けももももも