
中編
幹夫くんとウヌキロさん
匿名 2日前
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30年近く前。
小学校で仲の良かった幹夫くんという子がいた。
幹夫くんは自称霊感持ちだった。
といっても、常にはっきりと見えるわけではなく、調子の良い(悪い?)ときに見えたり感じたりする程度だったらしい。
私の方はというと、霊感云々には縁がなかったが、怪異怪談の類いは大好きだった。
あれは6年生の夏だったと思う。
その日も幹夫くんと私、2人で下校していた。
「あれ?」
幹夫くんが急に立ち止まった。
彼の目線の先には、畑の一角の見慣れた小さな雑木林があった。
「あんなのいたかなぁ?」
彼曰く、雑木林の間に今朝まではいなかった犬くらいの大きさの黒いモヤが見えるとのこと。
私は「お、またいつものだな」と思った。
しかし、今回はいつもとは違って、姿こそは見えないものの、私にも何となくそこに何かいる気配を感じることができた。
私は初めての体験にテンションが上がった。
一方の幹夫くんも、初めて私が同じ感覚を共有できたことでとても喜んだ。
幹夫くんは笑うと眉が八の字になる。
そのときの彼の情けない笑顔を、私は今でもよく覚えている。
私たちはそれを「ウヌキロさん」と呼んだ。
名付けたのは幹夫くんで、由来も聞いた気がするが忘れてしまった。
ウヌキロさんは常にその雑木林のところに居て、その場を動かない(らしい)
私たちはいつも登下校のついでにウヌキロさんを眺め、その正体について語り合った。
状況が変わったのはそれから2か月くらい経った頃だった。
幹夫くんによると、だんだんウヌキロさんの姿形がはっきりしてきて、少し動いたりもするようになったという。
その頃から、幹夫くんは時々学校を休むようになった。
初めは半月に1日くらいだったが、季節が冬に移ろうにつれて長く休むようになった。
私はよく学校からの連絡張や給食のパンなどを彼の家へ届けた。
いつものように届け物をしたある日、青白い顔をした幹夫くんがボソッと言った言葉を覚えている。
「ダメだったんだ…名前なんか付けちゃ…あんなのいないんだ…」
それからしばらくして、幹夫くんは家の都合(ご両親の離婚だった)で隣町の母方の実家へ移ることになった。
卒業を間近に控えたある日、一人で下校中のこと。
あの雑木林が目に入った。
何気なく眺めていると、驚いたことに雑木林から黒い影が道の方へ這い出ようとしていた。
「ウヌキロさん…?」
姿が見えたのは初めてだった。
這いつくばるそれは、ぼ
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- コナンの犯人の先駆けももももも