
長編
物件
匿名 2日前
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物件を探していた時に、私が実際経験した事を置いときます。調べたんですが、結局ここで何があったのか全く分からずじまい。。
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初めての一人暮らし、物件探しの日。
まだ20歳の私にとって、それは人生の大きな一歩だった。
不動産屋で担当してくれたのは、華奢で柔らかい物腰の若い男性。彼は慣れた手つきで、次から次へと物件を案内してくれた。だが、どの部屋も私の心には響かず、ただ疲れだけが募っていった。
5軒、6軒と回るうちに、いつの間にか日が沈み、街は薄暗くなっていた。
「もう一件だけ、行きましょうか」
彼の声に、正直「もう帰りたい」と思った。空腹もピークだった。なのに、なぜか私は断れなかった。
案内されたのは、10階建ての古びたマンション。2LDK、家賃は驚きの5万円。安さに驚いたが、営業の彼は「絶対おすすめです」と電話で仮予約をしようとする。
「まずは中を見てから」と言って、エレベーターで3階へ上がった。
その3階の空気は、違った。肌にまとわりつく湿気のような、不快な重み。息苦しくて、体の芯がざわついた。
玄関で彼が鍵を差し込むが、なかなか回らない。錆びついているらしい。力を込めても固く、彼は少し離れて電話をかけはじめた。予備の鍵を探しているようだったが、見つからなかった。
しかし電話を切ると、もう一度試す彼の手に鍵はすんなり回った。
中に入ると、広めのキッチンに左右に分かれた二つの部屋。普通の、どこにでもあるような部屋だった。
「ここ、決めた方がいいですよ!ほかの方も明日には契約したいって言ってますから」
彼の声はやけに熱を帯びていた。冬なのに、額に汗がにじんでいた。
私は気持ち悪さと寒気、吐き気とめまいに襲われながらも、巻き尺を手にカーテンの長さやキッチンの寸法を測り、スマホで部屋の写真を撮った。
ベランダの窓には、カーテン代わりに貼られた紙があった。ふと気になって、それを剥がして扉を開けると、そこに広がった景色は恐ろしくて言葉を失った。
真っ暗だった。夜の暗さとはまったく違う。光がこの空間に飲み込まれているかの様などんよりとした暗さだった。
ベランダの向こうには一面、墓墓墓…。広大な墓地とマンションの間には深い大きな溝があり、断崖絶壁のように見えた。懐中電灯を向けても底が見えない。更にその先には墓地ですら覆い尽くすような、深く大きな雑木林が会った。これをただの雑木林とよんでいいか分からな
後日談:
- 例の写真は、鏡面ガラスが貼り付けられたキッチンを撮った際の写真でした。 鏡面ガラスに反射して写真を撮っている自分の姿が写っていたのですが… 肩辺りで切り揃えられた黒い髪に、白い痩けた小さな顔、水色の浴衣を羽織った子どもが長い腕を私の腰に巻き付けこっちを見ている姿が写っていました。 ハクだったら良かったのに…
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