
高校時代の記憶が鮮明に残る冬の夕方、私は地方の公立高校に通っていた。二年生の冬、クラス替えで前の席になった美咲は、少し太めの可愛らしい女の子だった。彼女は占いやおまじないに目がなく、暇さえあれば雑誌やネットで見つけた面白い話を教えてくれた。
特に恋愛に関する占いが大好きで、片想いを叶えるためのおまじないを次々と試していた。ある日、私は彼女に聞いた。
「美咲、好きな人は誰なの?」
「歴史の佐藤先生だよ!」
佐藤先生は若くてハンサムな先生で、他の女子生徒たちからも人気があった。
「ライバルが多いね。普通のおまじないじゃ効かないかも。」
「大丈夫、特別なおまじないがあるから!」
美咲がほくそ笑む姿を見て、なぜか不安な気持ちが胸をよぎった。
数日後、放課後の準備をしていた私は、彼女のカバンを誤って床に落としてしまった。慌てて拾おうとした瞬間、目に飛び込んできたのは、血に染まった小さなクマのぬいぐるみの手だった。
「これ、何?」
「知らないの?海外じゃ、クマの手は幸運のお守りなんだよ。」
近所の公園で、クマが行方不明になったニュースを思い出し、私は耐え切れずにその場から逃げ出した。
それから数週間後、美咲はついに佐藤先生と付き合い始めたが、ある冬の夜、二人は帰り道で自動車事故に遭った。助手席に乗っていた美咲の手は、事故の衝撃で潰れてしまったと聞いた。彼女が愛用していたそのクマのぬいぐるみも、事故現場で見つかったという。私には今でもその光景が忘れられない。彼女の笑顔と、最後の悪戯の代償を。
何が幸運をもたらすのか、それは誰にもわからない。私たちが願うものが、時に恐ろしい結果を招くこともあるのだと、私は思い知らされた。
あの日以来、あのぬいぐるみは私の夢の中に現れ、笑っているのだ。
「次は誰の願いを叶えてあげようか?」と、私にささやくように。
それが、果たして本当に幸運なのか、今でも考えさせられる。
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