
私が大学に進学し、一人暮らしを始めた冬の夜のこと。母は仕事が忙しく、私は夜の静けさの中で不安を抱えていた。その頃、隣の部屋から聞こえる声が気になり始めた。明るく楽しそうな笑い声が、私の孤独感をさらに深めていく。
隣には子供がいる家族が住んでいると信じていた私は、毎晩その声を聞きながら、心の中で羨ましさと嫉妬が渦巻いていた。そんなある日、ふと隣の家のドアが開き、見知らぬ女性が姿を現した。彼女は「引っ越してきました、〇〇です」と言いながら、手にお菓子を持っていた。
驚いた私は、夕食時にそのことを母に話した。すると、母は不思議そうに「隣は空き部屋のはず」と言った。私の心に不安が広がり、隣の家に何が起こったのかを考え始めた。
翌日、私は隣の部屋のドアをノックしてみたが、返事はなかった。すると、ふと窓の外に目をやると、古い写真が落ちているのに気づいた。拾い上げてみると、そこには笑顔の家族が写っていた。しかし、その写真には女性の顔がぼやけており、何かが違和感を与えた。
その写真をじっと見つめていると、隣の部屋からまたあの笑い声が聞こえてきた。以前は幸せそうに聞こえたその声が、今はどこか冷たく感じられた。恐る恐る母にその写真を見せると、彼女は顔色を変え、「それは…」と呟いた。
調べてみると、隣の部屋で数年前に一家心中があったことが判明した。その家族が幸せそうに笑っていたのは、実際には死の直前の姿だったのだ。私が聞いた声は、彼らの残したものだったのかもしれない。あの幸せそうな笑い声が、実は悲劇の影を引きずっていたことを知り、胸が締め付けられる思いがした。もう二度と、あの声を耳にすることはなかった。恐怖よりも、切なさが心を支配していた。私はその後、一人暮らしを続けることに恐怖を感じるようになった。隣人の声は、私を見えない恐怖へと誘っていったのだ。彼らの幸せが、私の孤独を引き裂くように。
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