
長編
大学の怖い話
匿名 2015年12月7日
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とある院生の話をしよう。
彼は大学の研究室で泊まり込みで研究課題をしていた。
とは言え、夜に実験をやると機械が大掛かりなものなので動かすと騒音が発生するから室内でのデータ整理とか実験室で明日の実験準備をするとか、そうした事務処理が夜の主な作業だった。
そのときは、学生の管理や仕事の整理のため、教授もいたわけなんだ。
深夜の一時頃、教授はふと何か気になり出したみたいで彼に実験室の確認をお願いしたんだ。
明日の実験準備が確かだったか、パソコンの消し忘れがないかだったか、些細なことが気になったようで少し頼まれて欲しいとのことだった。
彼はポスドクで教授からも信用されていたし、実験室までは歩いて五分くらいのところだった。
課題が一区切りついたこともあり、彼は教授の頼まれ事を引き受けたんだと。
因みに、他にも修士課程やポスドクが何人かいたんだが、彼らはやることをやって仮眠室で寝ていたから、彼しか頼める人もいなかったらしい。
それで彼は教授から鍵を預かって実験室まで見回りに行った。
実験室を開けて部屋に入ると、パソコンがついていた。
実験室には実験装置を制御したり実験データを取るためのパソコンがあるんだ。
なので、彼は誰かがパソコンをつけたことを忘れて出て行ったんだろう、と考えてパソコンを消した。
このとき、明日は実験で今日は準備で慌ただしい日だったから、そのせいだろうと思うくらいだった。
それから特に変わったこともなく、彼は見回りを終えて、研究室へと戻った。
研究室へ戻った彼は教授にパソコンが附けっぱなしで画面がついていたことを報告した。
そこで教授は、あぁそうか、と言って少し間を置いてから眉をしかめた。
彼も自分の口でそのことを報告していて違和感を感じた。
普通、パソコンをつけっぱなしにしていて、放置しているとスリープモードになる。
使っているパソコンはそんなに古いものというわけでもなく、二時間、三時間と放置していたら、スリープモードになっているはずだ。
そして、彼ら研究室のメンバーが最後に実験室を後にして鍵をかけたのは午後10時頃。
深夜1時よりも三時間ほど前のことだった。
教授はそんなこともあるだろうと言って仕事に戻りましたが、彼はそのことが頭にこびりついてしまい、気になって仕方なかったそうだ。
2時になるかどうかの頃、彼は教授にもう一度実験室を見回りに行きたいと申し出た。
何故か見過ごせないという気持ちになったことや気になって仕方がなかったというところだった。
教授は、もう遅いから仮眠室で仮眠を取るように、と促したが、彼は寝る前に軽く見回るだけだと言って、教授を説得した。
教授も早めに帰ってくるようにと彼の申し出に折れる形で実験室の鍵を彼に渡した。
彼は実験室に入ってライトを付けた。
しかし、実験室に問題はなく、あたりは静かだった。
彼は何となく実験室で明日の準備がきちんとしているかどうかだけ見てまわっていると電灯がチカチカと点滅し、少し肌寒くなってきたようだったと。
そのときは夏頃で蒸し暑かった上に実験室は節電のために冷房も入ってなかった。
冷房を入れる必要のある実験装置もなかったことも理由だ。
なので、彼はおかしいと思うと同時になんとも言い様の無い恐怖を感じ、ドアの方へ早足で向かった。
しかし、彼がドアノブに手を掛けようとしたところでドアの鍵が勝手に閉まってしまった。
鍵を外そうとしても鍵の部分は固くなっていて開かなかったそうだ。
彼は半狂乱になりながらドアを叩いて助けを呼んだ。
すると、後ろから白いもやのようなものが掛かった。
彼は直感的に振り向いたら殺されると感じた。
目をつむり、何事もないよう祈っていると、急にドアが開いた。
彼の前には教授がいた。
後ろにはまだ冷たい気配があり、とてもではないが、安心は出来ない状態だったそうだ。
教授は落ち着いた様子で「後ろは振り向かず、ドアのこちら側にゆっくり来なさい。落ち着いてゆっくり」と彼に言いました。
彼はゆっくりと教授のいるドアの外へと一歩一歩小さく歩き、そして、ドアの外へ出ると教授は力一杯ドアを閉めました。
彼は教授に何がどうなっているのか、疲れた声で聞くと教授は苦虫を噛み潰した顔をしてこう言いました。
「君の身体中に青白い手がひっついていた。あちら側があの世のようだったよ」と。
彼は恐怖から研究室で明かりを付けたまま一晩過ごしたそうだ。
後日談として、教授の友人に神主がいて、実験前にお祓いをしてもらったそうだ。
そのとき、その教授の友人である神主曰く「国の保有している土地や大学が保有している土地は広大になることが多く、買い取り費用が馬鹿にならないから昔の刑場やら不動産でも持て余すような場所を引き取ることがある。ここはそういう忌み地の類いなんだろう。人で活気ついている時間が長ければ影響は非常に小さいが、極稀に洒落にならない怨霊を呼び込んだり異界のようになってしまったりする。今回は教授んとこの実験室が運悪くそうなっちまったんだなぁ。ほれ、お札やるからいくらか貼って何年か様子見てみろ。それでダメなら、別のとこに引っ越しさせてもらえ」と。
神主は終始「厄介なもんを押し付けやがって」とぼやいていたそうだったが、そこは教授のポケットマネーで宥めたとかなんとか。
以来、何にも起きてはいないそうだ。
因みに、教授はあのとき一人で行かせるのが何となく不安だったため、彼が行ってから数分経ってから様子見に行ったら、実験室からドンドンと力一杯叩く音が鳴ったので開けてみると彼のあの様だったそうで、教授は教授で友人が神主なんかをやっているものだから幽霊などの心霊は立場上否定しつつも否定しきれない部分があり、教授も怖い目に何度か遭ったことがあるため、恐怖よりもまたこれか、という具合だったそうだ。
内側から、つまり、彼の方からは鍵が掛かったように見えたが、鍵が掛かっているようなことはなかったとも。
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