
長編
拒絶する山
しもやん 3日前
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年の夫婦を恨んでいるわけではないが、ここに登山というスポーツの孤独がある。他人の言うことはまったくあてにならない。この先の道がどうなっているか。山頂まであとどのくらいか。危険か所はないか。それらは実際に歩いてみないことにはわからない。彼らは南竜ヶ馬場までいけると請け合ったけれども、おそらくそれは夏季の経験に照らしたものだったのだろう。
ほどなく御舎利山に着いた。このピークでは西からチブリ尾根が合流してくる。道標と地図にもそう書いてある。進路は変わらずそのまま北を目指せばよいはずだった。地図を出し、現在地を確認する。コンパスで方角を確かめる。俺はまちがいなく北に進んだと思う。少なくともそのつもりだった。
だが実際は西のチブリ尾根に迷い込んでいたのだ。いまでもなにがどうなったのかまったくわからない。ただひとつ言えるのは、これを機に道迷いが深刻化したということだ。尾根の下りは迷いやすい。山頂から見てふもとに向かうにつれ、支尾根が分岐していくからだ。夏季なら明瞭なトレイルを辿るだけのチブリ尾根も、冬季は雪に隠れて道は不明瞭、初見の俺にとってチブリ尾根の下りは脱出不可能の迷路だった。
さらに当の本人は南竜ヶ馬場に向かっていると思い込んでいる。おかしいとは感じていたし、地図を何度も開いたし、方角も再度確認したはずた。にもかかわらず、俺は白山への主稜線を歩いていると錯覚し続けていた。
何度もルートをロストし、その都度登り返し、体力も限界に近づいていた。時刻は18:30をすぎ、陽が沈みかけている。気温はぐんぐん下がり、風は身を切るように冷たい。こんな尾根のど真ん中ではテントも張れないだろう。陽があるうちですらこれだけ右往左往しているのだから、日没したが最後、まともに歩くのは不可能である。
死を覚悟したとき、遠くに山小屋らしきものが見えるのに気づいた。あれが南竜ヶ馬場なんだろうか? ルートは積雪のせいで相変わらず不明瞭だったが、強引にハイマツを突っ切り、尾根上をひたすらトレースすることでつねに小屋を視野から外さないように気をつけた。目を離した隙に小屋が消えてなくなるとでもいうかのように。
死ぬ思いで辿り着いた小屋の名前は、「チブリ尾根避難小屋」。慌てて地図を開くと、南竜ヶ馬場からはるか西に逸れた尾根の途中にある無人小屋だった。このとき感じた恐怖がわかるだろうか。確実に北を目指して歩いていたはずなのに、まっ
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- タイトルとは裏腹に期待外れだった話。。agent47
- 怖くはないけどつくりではないので面白かった名無し
- 読みずら(´-`).。oOサラダ
- ごくろうさん♪妹
- (´・д・) 終わんのかい(´・д・)