これは、私が数年前に体験した不思議な出来事です。 最近は次々と大型ショッピングセンターが開店し、昔ながらの商店街は廃れる一方です。 私が小さいころによく行っていた商店街も例に漏れず、時代の流れの煽りを受けて次々と閉店していました。 当時、私は就活真っ只中で、なかなか内定が決まらずに気が滅入っていました。 たまには気分転換でも・・と思い立ち、久しぶりにその商店街へ足を運んだのです。 案の定、ほとんどの店がシャッターが閉まっていて、通る人もあまり居ませんでした。 とりあえず自販機でジュースを買い、そばにあった休憩用のベンチに腰掛けました。 「はあ・・昔は人で溢れた、活気のある商店街だったのにな・・。」 そんなことを考えているうち、就活の疲れもあったのでしょう、そのうちウトウトしていました。 （ワイワイ・・ガヤガヤ・・） 私は沢山の人の気配で、ハッと目を覚ましました。 それは驚きの光景でした。 ついさっきまでシャッターが閉まっていたお店が開店していて、沢山のお客で賑わっているのです。 まるで昔と同じように・・。 「なにこれ？またお店始めたのかしら？でもついさっきまで・・。」 一瞬何が起こったのか分からず、その場を動けないでいると、ある店が目に入ってきました。 それは昔ながらの電気屋（今で言う家電量販店）で、店頭に展示用テレビを置いてＣＭやなんかを流している店でした。 私も小さいころに何度か利用したことがありました。 そのテレビで流れていたニュース番組を見て、愕然としました。 『昭和○○年○月○日、本日のニュースをお伝えします』 「昭和・・？どういうこと？まるでタイムスリップでもしたかのよう・・」 そんなことを考えていた矢先、私は激しい目眩に襲われ、気を失ってしまいました。 気が付くと、私は元のベンチに座っていました。 辺りを見回しましたが、先程までと変わらず、ほとんどの店はシャッターが閉まっていて廃れた商店街のままでした。 あれは夢だったのでしょうか？ あのとき、商店街を行き交う人々の息遣いが今も生々しく残っているのです。